ギャングにしては珍しくブチャラティチーム内ではカードゲームをすることはない。
映画の観すぎかもしれないが、ギャングと言ったらカジノでポーカーやバカラを楽しむしアジトで煙草を噴かしながらババ抜きなんかやっているイメージがある。
「そりゃあ簡単な理由ですよ」
「勝負にならねぇもんなー」
「誰か強い人でもいるの?アバッキオとか?」
「強い弱いの問題じゃあねぇ。ナランチャの言う通り勝負以前の話だ」
「どういうこと?」
「あのな、このチームでカードゲームが成り立つ訳ないんだよ」
「ミスタのこだわり、知っているでしょう?」
「ミスタ?……あー……なるほど」
「そう言うこった」
ミスタのことを思い浮かべて私は直ぐに納得した。
ナランチャが聞いてくれよーと次々とエピソードを話し出す。
ババ抜きをすればジョーカーよりも4を引いては絶望し、七ならべをすれば4を置かせないように5のカードを止め、それなら神経衰弱ならとやってみれば4のペアが出来ても手札にしようとしないのだから全くカードゲームのルールが適応されないのだとナランチャは唇を尖らせ、フーゴは呆れ、アバッキオはやれやれと紅茶を飲む。
「でもミスタはそうだとしても、彼がいないところでもやったりしないよね?ナランチャたちがトランプしてるの見たことない」
「それもまたややこしい理由でよォ、俺らがやってるとミスタが入りたがるんだよ」
「……え?」
「そんで人数にいれると、さっきみたいにゲームになりゃしねぇ」
「それで何となく自然とみんなトランプをしなくなったって話です」
「さびしんボーイかよ」
「そーだぜ、さびしんボーイだからよォ……あんまり俺を放っておくんじゃあねぇぜ?」
「ミ、ミスタ!」
いつの間にか背後に立っていたミスタが私の首に腕を回して抱き締めてきた。
「丁度メンツも揃ってるし久々にカードやろうぜ」
「4が出ても止めたりするなよ」
「出るわけねぇだろ、今の俺には勝利の女神様がついてるんだぜ?」
「ミスタってそう言うところも思い込み激しいよなー」
全くもってナランチャの言う通りである。
信仰とジンクス
ワンライ「こだわり」