僕の彼女は僕よりも年上の女性だ。
僕がまだ十七歳だった頃からの知り合いで、想いを伝えた時には既に彼女は二十歳を越えていた。
なので一回目の告白はそれを理由にフラれたのだが、理由が年齢ならばと僕は二十歳になった誕生日当日の朝に彼女に二度目の告白をした。
誕生日の朝に彼女の家の玄関で薔薇の花束を差し出して告白した僕を見て、彼女は形のよい眉を下げて微笑み頷いたのだった。
あれから一年。
僕は彼女と一緒に暮らしている。

「今朝はいつものコーヒーと違うんだ。君が好きそうな銘柄を見つけたから試しに買ってみたんだけど、どうかな?」

「とても美味しいわ。ありがとう、フーゴ」

僕は日々彼女への気配りやプレゼントを欠かさない。
彼女も笑顔でありがとうと返してくれる。
それは僕だけが彼女を愛していると思える行為のひとつだ。
だけど僕は彼女の希望を叶えられない事が時にはある。
任務が長引いて約束の時間に間に合わないだとか敵の銃弾が横っ腹を貫通してジョジョの治療が必要だとかそういう類いのことだ。
彼女の希望を受け入れられなかったことで彼女にフラレるかもしれないという考えが一度頭を掠めると、僕の思考はそれで埋め尽くされてしまう。
僕が約束を何度反故にしても彼女は怒ったりせずに優しく出迎えてくれた。
だけど僕がネガティブな気持ちをいつまでも吐露し続けるとうんざりとした表情で彼女は僕を叱りつける。

「いい加減にして。毎回毎回聞き飽きたわ」

「嫌になったらこうして待っていない」

「フーゴはもう少し私以外のことも考えた方がいい」

「私はそんなことであなたを嫌いになったりしない」

彼女の言葉ひとつで僕の心に巣食う真っ黒な霧はたちまち霧散した。
彼女の言葉を疑う余地もない。
僕の事を心配して言ってくれる彼女の言葉を全て受け入れるのが彼女に対する一途な愛だと確信している。
ある時、ミスタがやれやれと肩を竦めて言ったことがある。

「フーゴは彼女にベタ惚れだな」

僕はピンと来なかった。ミスタにこいつ何言ってるんだ?というような目を向けて、はぁ?と言った。

「僕は彼女の恋人なんだぞ。これくらい尽くすことや好きなのなんて、恋愛したら当たり前だろ」

僕の返事にミスタは口の端をひくつかせて、へぇ、と呟いた。

「お前が彼女のことが大好きなのは解ったけどよォ〜、彼女はお前と同じくらいお前のことが好きなわけ?あんまり束縛したりすると逃げられちまうぞ」

低俗なミスタらしい考えだった。
僕はもう返事をする気をなくしていた。
僕への彼女の愛を疑う事など一度たりともない。
彼女の愛を信じることが本当の愛の証しだと僕は知っているのだから。


きみは宗教、ぼくの信仰


ワンライ「惚れた弱味」






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