さて、困ったぞ。
不釣り合いな雑貨屋にひとりで入ったものの何を買えばいいのかさっぱり分からない。
店内には女性ばかりだし男性もいるとしても家族連れか恋人連れで、男ひとりでいるのは僕だけだ。
レジにいる女性スタッフと目が合えばにこりと微笑まれた。これは完全にプレゼントを買いに来た男子高校生だと思われている。いや文字通りそうなのだが、微笑ましく思われるのは心臓の奥を伸びた爪でカリカリと引っ掛かれたような心地になるのでやめて欲しい。
早く目的のものを買わなくては、と棚に陳列された物を見ていくがこんなに品物があってもどれもピンと来ない。
彼女が好きなものは、と考えれば黒髪の彼女が「典明くん」と呼んだ。
豊かな黒髪と印象的な瞳。
制服姿の彼女の持ち物を思い出す。

「これ典明くんみたいだと思って買っちゃった」

「見てみて!さくらんぼ柄!」

「この犬、典明くんに似てると思って」

「この花、典明くんの髪の毛と同じ色だね」

……なんだソレ。
全部僕が好きなものじゃあないか。思っていた以上に彼女が僕に染まっていることに気付いて照れ臭くなった。
こんな所で赤面していたらまた微笑ましく思われてしまうじゃあないか。
ああ、困った。
それを嬉しく思っている僕に僕自身戸惑ってる。
さくらんぼ柄のコンパクトをプレゼントしよう。
僕だと思っていつも持っていて、と言ったら君は何て言うかな。

染まれ、この恋


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