「あ!その色可愛い〜!」

「でしょー?新色だから買っちゃったんだ〜」

「いいなァ。私も欲しい……」

「駄ァ目。この色は俺とソルベのオソロにすんだもん」

「ええ〜!私もオソロにしたい〜」

「どうしよっかなぁ」

「お願い〜ジェラート〜」

「どうする?ソルベ」

「お願い〜ソルベ〜」

「……どっちでも構わない」

「ほんと?本当に良いの?」

「……Si.」

「ソルベがそう言うならいいよ」

「Grazie!」

「ソルベの塗り終わったら塗ってあげる」

「やったぁ!」

ジェラートの言葉に彼女は嬉々として空いているソファーへ座ると靴を脱いで足の爪の甘皮除去に取りかかった。
俺の足元でマニキュアを塗るジェラートを見れば、今にも鼻歌でも歌い出しそうなほど上機嫌なのが解る。
相方ながらいい性格をしていると思う。
わざとなのか無意識なのか、ジェラートは彼女が興味を持ちそうなことを話題にして今のように突き放したり受け入れたりしては喜んでいる。
ねだる彼女の表情に加虐心が煽られるのは俺とて同じだから、ジェラートは尚更だろう。
その癖ジェラートは俺に決定権を寄越してくる。
どっちでも構わない、はイエスの意味だ。ノーは存在しない。
彼女のお願いを一度も断ったことはない。

「ソルベ、終わったよ」

見れば黒く塗り潰された爪が天井のライトを受けて緑の偏光を放っていた。

慰め上手の
マッドなダーリン


ワンライ『無意識』






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