任務を終えてアジトに戻ると見慣れない男がいた。
ブロンドにブルーアイ。歳は20、いや19か。安っぽいスーツに趣味の悪い花柄のシャツの胸元をはだけさせて着ている。いかにも半グレ風情のチンピラだ。
男は私を見るとギラリとその目を光らせる。その光りはまだ濁っておらず、私はふぅんと呟いた。
「リーゾが言ってた新入りだな。名前は?」
「……人に聞く前に自分が名乗る方が先じゃあねぇのかよ?」
「オイ、お前誰に向かって」
リゾットが新入りの態度を諌めるのを止めて、私は新入りの前に立つ。背は変わらない程だが目付きを鋭くさせれば新入りが怯んだのが解る。
女だからといって舐め腐ってる口調だ。少しくらい脅かしても構わないだろう。
こういう輩の鼻っ柱を折るのは気味が良い。
「だからクソガキは嫌いなんだ。先輩を敬う気持ちがねぇ。二度も同じ事を聞かせやがる。新入りが先輩の言うことを聞けねぇならさっさとこの世界から足洗ってマンマのオッパイでも吸ってな、マンモーニ」
新入りの肩を押すと気圧されたのか簡単にソファーへ座り込んだ。私は煙草に火を点けて紫煙を吐き出す。
傍観していたリゾットがはぁと深々と溜め息をついた。
「……この人はこのチームで一番長くいるメンバーだ」
「……アンタよりもか?」
「勿論だ。そして彼女がお前の教育係になる」
「ハァ!?」
「残念だったな。それともお家へ帰るかい、お嬢ちゃん?」
「くそッ!帰るかよ!」
「ベネ。それじゃあ可愛い弟分の名前を姉貴に教えてくれよ」
「……プロシュートだ」
「これから宜しくな、プロシュート」
私が差し出した手をプロシュートはパチンと叩くように合わせる。
こいつを一人前のギャングに育てるには中々骨が折れそうだった。
スモーキング・ミューズ
ワンライ『初対面』
福音の小舟夢主