イタリア、ネアポリス。二人分のヒールがコツコツと石畳の上で鳴る。
ふわりと揺れるミディアムヘアーとロングヘアーはどちらも銀髪で、イタリアの美しい太陽の光を浴びて殊更キラキラと光っていた。
道行く男性は皆、その美しい二人組に色っぽい視線を投げ掛けるが本人たちの興味はショーウィンドゥへ向けられている。

「ねぇ、沙良。あのワンピース、貴女に似合いそうよ」

「わぁ!本当だ、可愛い!中見てみる?」

「そうね、試着してみないとね」

「アデレードったらまだ買うの?」

「あら、まだまだ買い足りないわ」

アデレードの両肩には既に沢山のショッパーが掛けられているのを沙良が指摘すれば彼女は何ともないと言う風にショップのドアを開けた。
自分の好きな服を着られるようになったのは沙良もアデレードも同じなのだ。
あれもこれも買うと言うよりは自分の好きなものや似合うものが解っているからこそ即決の買い物をするため、二人の買い物はいつも荷物が多くなる。

「探したぜ、アデレード」

「ここにいたのか」

沙良が先程のワンピースを着て試着室から出てくると、アデレードの傍らにはプロシュートとブチャラティが立っていた。
彼らはアデレードいるところならば呼ばれずとも必ず現れる。
沙良はかつかつと試着用の靴を履いて、二人とアデレードの間に割って入り、アデレードの前で両腕を広げて二人を見上げて言う。

「今日は私がアデレードちゃんを独り占めする日です!」

突然の沙良の発言にプロシュートやブチャラティは勿論アデレードまでぽかんとする。
一瞬止まった時間の中でアデレードがいち早くフフフ、と笑った。

「聞いたでしょう?そう言うことよ。折角のデートを邪魔しないで頂戴」

アデレードはそう言うとプロシュートとブチャラティに持っていたショッパーや荷物を渡していく。

「気をつけて持って帰ってね」

次々と渡される紙袋と箱にプロシュートとブチャラティは落とさないように必死になる。
それを見ていた沙良がハッと気づいたように自分の荷物も出した。

「これも……!」

「これもよ。大事に届けて頂戴」

「……Si.」

プロシュートの腕に高く積まれた箱の上にアデレードが沙良の荷物を載せる。荷物を落とさないようにと注意するあまり眉間にしわを寄せるプロシュートに目もくれずにアデレードは沙良に向き合うと沙良の着ているワンピースを眺めた。

「ああ、沙良!やっぱり似合うわ!とっても可愛い!」

「ありがとう!これも買っちゃおうかな」

「今なら荷物持ちも丁度いるしね」

会計の済んだ新しい袋がブチャラティの荷物に加えられた。

「荷物持ちに来てくれてありがとう」

沙良とアデレードはプロシュートとブチャラティに向けてにっこりと笑うと、腕を組んで店を出ていく。

「お茶でもしない?」

「いいわね!冷たいものが飲みたいわ」

二人は軽やかな足取りでバールのある方向へ歩いていった。




本日独り占め宣言!

夕方にもう一度やって来て沙良ちゃんにまだです!って言われるメンズ




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