ホルマジオは話を終えると、グラスに残っていたギムレットを飲み干した。
空になったグラスをちらりと見たソルベが黙って新しい酒を作り始める。シェイカーは使わずにミキシンググラスに入れた材料をステアして出来たのは、ギムレットのロックだ。

「Grazie」

ホルマジオはソルベに一言礼を言えば、ソルベも静かに頷いた。
オールド・ファッションド・グラスがホルマジオに良く似合っている。氷がカランと小さく鳴った。

「……“ギムレットには早すぎる”ってどっちが言ったんだっけなぁ……」

「俺が知ってる訳ないだろ」

ホルマジオの質問にソルベは答えて、シェイカーを振る。
テキーラにオレンジジュースとグレナデンシロップ。
テキーラ・サンライズだ。

「……パンチェッタにだ」

そう言ってソルベは誰も座っていない椅子の前にテキーラ・サンライズを置いた。

「アイツの話をするのにパンチェッタの分の酒がないと煩いからな」




ソルベはかく語りき。
パンチェッタの写真か。誰が持っていたか見当はつく。プロシュートだろ?──やはりな。……アイツめ。全部捨てたと言っていたが、一枚だけ残しておくとは女々しい。
──ああ。確かに俺たちの姉みたいなモンだったが、特に慕っていたのはプロシュートだ。
パンチェッタはプロシュートの教育係だったからな。
入った頃のプロシュートって言えば、生意気なチンピラ風情のガキだった。
ああ……丁度今のお前と同じ歳だったな。アイツにもそういう時代があったんだぜ。
教育係が女だって言われて気に入らなかったんだろう。何かにつけて反抗してた。パンチェッタがプロシュートの為に揃えたスーツも着やしない……勿体ねぇ。テーラーで誂えた一級品だ。売りゃそこそこの金にはなっただろうが。
着もしねぇし売りもしねぇでよ。な?解るだろ?そういうところが中途半端だった。
ああ、そうだな……ある会合に出席する時、スーツを着てこなかったプロシュートをパンチェッタはその場でヤツのツラをボコボコにした。身嗜みくれぇ出来ねぇのかってよ。出来ねぇなら毎日ビシッと決めてクセつけとくもんだって殴るわ蹴るわで、相手のオッサンがビビッちまって会合にならなかった。笑えるだろ?
──あ?そりゃあお前、知ってるさ。俺も一緒に現場にいたからな。
……で、次の日、顔面痣だらけにしたプロシュートがパンチェッタに買ってもらったスーツ着てやってきたってオチだ。
今のアイツをそうやって育てたのはパンチェッタだ。
プロシュートがお前に厳しくするのもパンチェッタの教育があったからだろう。だからお前とプロシュートを見ているとつくづく思う。先頭が誰であれ変わらねぇんだってことをな。
アイツは、プロシュートは、パンチェッタに良く似ている。



サイレント・パレード



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