一週間はあっという間に過ぎ去った。居なくなっているかもしれないという心配も余所に、彼女は忠犬よろしく私たちと最後に別れた場所で座っていた。以前は無かった四角い箱も一緒だ。

「良かった、無事だったんだね!…ってあれ、もしかして寝てる?」

日が昇ってもう大分時間が経っている。こんな平地で眠ってよくも巨人に襲われなかったものだ。

「すごい!眠る巨人なんて初めて見たよ!」

「ごちゃごちゃ言ってねぇでさっさとそいつ回収して撤退するぞ」

でもどうやって起こそうか、ハンジがそんな思案をしている間に、考えるより行動する派の誰かさんは彼女の顔面に蹴りを入れていた。あれは痛いんだよね、うん。しかし幾ら温厚で友好的だからってそれはどうなのだろう。本気で反撃されたら幾ら人類最強とはいえただでは済まないだろうに。

“いたっ…なっ、何!?”

彼女はばっと顔を上げると慌てて当たりをきょろきょろ見回した。言葉は通じないけれど言っていることは何となく分かる。本当に、人間と変わらない。

“あっ、一寸法師さん!…と、メガネさんと金髪さんもいる…っていうかみんないる!良かったぁ、来てくれたんだ…!”

ずいっと体を屈め、こちらを確認したかと思うと、彼女は急に涙を流し始めた。ぽとりと大きな水滴が落ちると、下では水音がするほどだった。

「え?え?何で泣くの?感動の再会だから?」

“よ、良かったよぉ〜。流石に一週間一人は寂しいって…”

できることなら涙を拭ってあげたいけれど、届くわけはないからそれはできない。もしかして寂しかったのかな、なんてことを思った。だって彼女の泣き顔はまるで迷子の子供のそれだ。

「…ハンジ、誘導してあげなさい」

ゆっくり泣かせてあげられる余裕はなく、エルヴィンから指示が飛ぶ。そうだ、ここは壁外なのだ。前回の遠征から日も浅いし、なるべく被害は抑えたい。ハンジは立体機動で彼女の肩口まで上り、既に体に乗っていたリヴァイの隣に並ぶ。すると彼女が恐る恐る手を出してきたのでそれに飛び乗った。リヴァイはハンジに席を譲るように地上に降りたので、二人きりで彼女と向き合う。

「ほら、泣きやんで。もう置いて行ったりしないから」

あやすように彼女の親指の付け根のあたりを撫でると、言葉は通じていないはずだけど彼女は泣きやんだ。

「一緒に行こう」

身振り手振りでどうにか彼女を壁の方まで誘導する。彼女は素直に壁の方へと歩き出してくれた。まるで、私たちが彼女を迎えに来たのだということを理解しているようにも見えた。彼女はとても物わかりがよく、言葉は通じていないけれど、コミュニケーションが取れるのはもう疑うまでも無かった。

“来てくれて、ありがとう”

「ん?何て言ったの?」

手のひらの上から彼女を見ると、彼女は照れたように笑っていた。

迎えに来たよ
(笑顔は万国共通)


祥子
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