「どうしても駄目?」
「彼女をそのまま連れて行く訳には行かない。隠しておく場所も無いんだ。今は一旦この辺りに置いて行くのが妥当だろう」
「そんな…そうだ、じゃあ私も一緒に残るよ!」
「駄目だ。危険過ぎる、許可できない」
エルヴィンは考えを変えてくれそうにはない。私は馬上で身を捻って、後方にいる着衣の巨人を見上げた。彼女は列の最後尾から少し離れた所を歩いて着いて来ている。
「ハンジ、分かってくれ。今彼女を壁内に入れるのは彼女の為にも良くない」
彼女は私を助けてくれた。せっかく巨人とコミュニケーションが取れると思ったのに。渋々頷いた私を見て、エルヴィンは少しの辛抱だからと言った。
私は馬を操り、着衣の巨人の足元へと降り立った。
「おーい!!」
彼女はふと下を見て、慌てたように下ろしかけていた足を引っ込めた。そのまま下ろしていたら私は潰れていただろう。近くで部下がぎょっとするのが見えたけど、潰されなかったしまぁいっか。
彼女がこちらを認識したのを確認してから、私は立ち止まって両手を広げた。ちょうど通せんぼをするように。
「ちょっとここで待っててねー!また後でくるからー!」
大声で呼びかけると彼女はちょっと首を傾げた。困惑しているようだ。そりゃそうか、手招きしておいていきなり着いてくるななんて言われたら誰でも戸惑うよねぇ。でもごめん、今貴女を連れて行く訳にはいかないんだ。
「またねー!!」
大声で叫び、彼女のもとを去る。名残惜しいけど後ろは振り向かない。
「…ハンジ分隊長、着いてきてますよ」
「あちゃー、伝わらなかったか。仕方ない、もっかい足止めを…」
しかし、私が引き返す前に黒い影が視界を横切った。
「俺がやろう」
リヴァイだ。手荒な真似しないといいんだけど、なんて思っていると案の定リヴァイは彼女の顔面めがけて強烈な蹴りをお見舞いした。
人類最強の蹴りは痛い。何故知ってるかって?そりゃあ勿論私も喰らったことがあるからだよ!
少しの間お別れです
(あー…すぐ戻ってきてあげるから、そんな捨てられた子犬みたいな目しないでよ)
祥子