視界に入った、すばしこくて黒くてちっさいもの。最初は虫か何かかと思ったけど違った。
「……小人!?」
びゅんびゅんと私の周囲を飛び回るそれは、何と小さな小さな人間だったのだ。小人はあっという間に私に群がっていた小鬼達を倒していった。小鬼よりも更に小さいのに、どこにそんな力があるのだろう。まるで一寸法師だ。
“おい、てめェは何者だ”
ふと何か声がした。小鬼達の不明瞭な呻き声ではない。気のせいかとも思ったけれど、ふと下を見てみると例の物凄く強い一寸法師が建物の屋上から私を見上げていた。小さいけれどちゃんと服も着ているし、よく見れば武器のようなものも身に付けている。もしかしたら意思疎通ができるかもしれない。少なくとも小鬼よりはよっぽど文明人らしく見える。
「あ…あの、今喋りましたか?」
“あ?何言ってんだ?”
「あれ?通じてない?…あの、日本語分かりますか?」
一寸法師が確かに何かを喋っているのは分かるのだが、早い上に小さくて聞き取りづらい。私はもっとよく聞こうとして、少ししゃがんで顔を一寸法師に近付けた。
“…!?テメェ、俺を食う気か?面白ぇ、削いでやる”
「あの…もう一度お願いしま…っえ!?」
一寸法師から急に針と糸が飛んできて、私のマフラーに引っ掛かった。
“こいつ…うなじを守ってやがるのか?”
「あああああの!?何をしてるんですか、って痛い痛い痛い!」
そのまま私の後頭部に向かった一寸法師に手を伸ばすと、手に刺すような痛みが走った。地味に痛い。同じく足も何だかチクチクするなーと思って目線を落とすと、いつの間にやら私の周りには小人がわらわらと集まっていた。服の上からだけど針のようなもので刺されている。ちょっと待ってこれどこのガリバー旅行記?もしかしてそのうち縄で縛られるんじゃ。
“全身分厚い布に覆われていて、攻撃できません!”
“くそっ、何てでかさなんだ!こいつが壁内に入ってきたら人類は…!”
わーわーと言葉が飛び交っているけれど、意味は理解できない。私は、取り合えず両手を空に掲げた。
攻撃の意思はありません
(だから一旦落ち着きましょう?潰しちゃいそうでコワイので)
祥子