最初に気付いたのはミケだった。いつもよりこちらへ群がってくる巨人が少ないと思っていた矢先の事。
「エルヴィン。一時の方向、大群がいる」
その言葉に一時の方角を見遣った者はみなそろって言葉を失った。大群なんかよりももっと驚くべきことに、そこには三十メートルはあろうかという大型の巨人がいたのだ。それだけではない、大きさで言うなら四年前にシガンシナ区の壁を破壊した超大型のほうが大きいのだが、その三十メートル級の巨人は、服を着ていた。
「何だ、アレは…」
旧市街地の中、まるで家々がおもちゃのように見えるほど。
「リヴァイ」
エルヴィンの鋭い呼びかけが掛かる前に、俺はブレードを構えていた。敵か味方か。それはまだ分からないが、いずれにせよ警戒しておくに越したことはない。
「……っ!凄い!凄いじゃないか着衣の巨人なんて!絶ッ対調査すべきだよエルヴィン!」
一同が言葉を失っている中、一人ハンジが興奮したように喚いている。五月蝿いことこの上ないが、まぁ興奮するなという方が無理なのかもしれない。今まで碌な成果の無かった状況が一変するかもしれないのだから。何であろうと捕らえて調べ尽くしてやるとしたものだろう。
「…待て。様子がおかしい。あの巨人、他の巨人に襲われている…?」
エルヴィンの言葉によくよくそいつを見てみれば、確かに襲われている。しかも、あれだけの巨大さにも関わらずやや押されているように見えた。
「なら話は早い」
周りの巨人を叩き潰して、恩を売るなり捕らえるなりすればいい。通常種に押されているようなやつに負ける気もない。
俺は馬を残して近くの建物にアンカーを突き刺した。幸いやつがいるのは旧市街地。立体機動には困らない。
「あっリヴァイ、抜け駆けはずるいよ!」
ごちゃごちゃ言っているハンジを尻目に、着衣の巨人のもとへ飛び出す。
今まで死んできた部下達の進撃の結果があいつだと言うのなら、それを手にするのは俺の義務。人類の義務だ。知りたいと願ってやまなかった外の世界の情報を、今この手に。
さぁ、テメェは一体何者だ?
着衣の巨人
(リヴァイに続け!援護しろ!)
(ファーストコンタクトは私が取りたかったのにいぃ!)
祥子