※主人公は男の子です、すなわちBLです
※ワンピースでの使用言語が英語であるという設定です
※「」内黒文字は基本的に英語です
※この色は日本語だと思ってください。見づらかったら拍手などからどうぞお気軽にお申し付けください。
嫌な予感がした人はお戻りくださいませ
戦闘の最中だった。単なる砲弾とは違った何かが飛んできて、それがどうやら能力者を狙った海楼石の細工が施されたものであるらしいと気付いて、考えるより先に体は照準の先にいたロビンを庇っていた。おれは能力者でもないし、レディを守れなきゃ男が廃る、そんな思いで飛び出して、結果、おれは海へ落ちた。
それなのに目を覚ましたときそこは海ではなかった。気絶でもしちまって船室に寝かされているのかとも思ったが、そこは固い大地の上だった。幾らサニー号とはいえこんな広い陸地は無かった、筈だ。それともまたフランキーの野郎が改造でもしたのか。いや違う、ここは、明らかに島の上だ。
「…ルフィ?おい、いねェのか?」
返事は無い。他にも次々と仲間の名を叫ぶが、幾ら待っても返事は来ない。どうやらはぐれてしまったようだ。クソマリモじゃあるめェし、そうは思ったがはぐれたものは仕方ない。取り敢えずサンジは立ち上がり、スーツに付いていた砂を払った。唯一自分の来ている服からだけは潮の香りが漂っていた。
名前の家は閑静な住宅街と畑ばかりが広がる地域に位置する。住民の平均年齢は高く、有り体に言えばじいさんばあさんしか居ない。そんな中唯一十代と若い名前は何かというとすぐに頼りにされるのだが(トタン屋根が落ちたから直してくれ、箪笥の場所を移動したい、屋根に何か引っかかったから取ってくれだのそれはもう色々だ)、その日も家に帰る前にばあさんにちょっと名前ちゃん良いかい、なんて言われて返事を聞かれる間も無く畑道に連れ込まれてしまったのである。まだ良いとは言っていないのに。
「ほらほらあの人よ。さっきからあそこにいるんだけどねぇ、言葉が通じないみたいなのよ。さっきからあの調子でねえ」
そう示された先にいたのは、どこのホストかというような、スーツ姿に金髪の細身の男だった。あの調子、というのはもういい年したばあさん相手に恭しく手を取って騎士みたいなキザな行為を行っていることだろうか。
「ほらあんた、学校で英語習ってるでしょ?ちょっと事情聞いてみいよ」
「ええー…」
「ほらほらいいから!若者でしょ、ばしっと行って聞いてこいさ」
ばしり、と背中を叩かれる。ちょっと今の名前としては人前に出たい格好ではなかったのだが、ここで家に帰してくれるばあさんではないともう知っている。
仕方なく、本当に仕方なく名前はその金髪ホストの人へ声を掛けた。諸事情あって英語が得意なのも事実なのだ、もう腹を括るしかない。
「あー…エート、コンニチハ。チョットお聞きしテもいいデスか…?」
その途端、何故かその男はとち狂ったように目をハート形にさせて名前に詰め寄ってきた。
「なんて素敵なレディなんだ!まるでこの枯れきった花畑の中に迷い込んだ一輪の麗しきバラのようだ!おれはきっと君に会う為にここへ来たんだねさあどうぞおれの手を取って――――」
流れるような仕草で手を取られて傅かれる。ばあさん好きというわけではなく只の女好きらしい。枯れきった花畑というのはばあさん方のことを言っているのだろうか。失礼なやつだ。そして幾ら英語が得意とはいえ、こんな早口では聞き取れない。
「あー…もっとゆっくり喋っテくれル?喋り慣れてナイから」
「んんー、そんな片言な君も素敵だァ!」
そしてどうやらこのホスト野郎は名前のことを女であると認識しているらしかった。それならば、と仕草をそれらしくしてみる。フェミニストならば女として扱われて何ら不利益は無い。
「…えーと、お兄サンは、どこから来たの?」
「おれに興味を持ってくれているのかい?何でも教えて上げるよおれは君に跪くために生まれてきた一人のナイトだからね――――」
「あー、エート、真面目に答えてくだサイ、あと、もっとゆっくり喋っテ」
「分かった」
「分かったんダ…」
どうやらオーバーなリアクションは挨拶のようなものらしい。あっさり手が離されて真剣な顔つきになる。ようやく見ることができた顔はなかなか男前で、そしてどこかで見たことがあるような顔だった。
「実はおれも、ここがどこか分からなくて、困っていたところなんだ。麗しきレディ、お尋ねしても?」
今度はゆっくり喋ってくれた。一応こちらの話を聞いていなかった訳では無いらしい。
「…ドウゾ。私に答えられることナラ」
そして幾つかの問答を繰り返した結果、分かったのはどうやらこの男は困っているらしいということだけであった。諸々の常識が欠如しているか頭がおかしいとしか思えないこの男は、自分は今偉大な航路にいたのだと言った。そして自分の名をサンジと名乗った。
………過度のワンピースファンとか、そういう…?
ひとまず周囲のばあさん方の視線が気になった名前は、適当にその場を取り繕って男の手を引いた。
祥子