スプリングシャワー

「ちょ、忍足忍足忍足!」

ナマエがありえないくらい肩を叩くから、肩が一瞬壊れるかと思った。
何や、と返せば、やばいやばいやばいの連呼。お前の方がやばいわ。


「あの男の子めちゃくちゃ可愛い!」

耳元でこそっと言われるとなんやムラムラするなあ。
そんなことを考えながらとりあえずナマエの視線の先を辿る。

そこには母親に手を引かれ、3歳くらいの男の子がちょこちょこと歩いていた。
残念やなぁ、あの子も充分に可愛いんやけど、やっぱり女の子の方がええなぁ。


「小さいな〜可愛いな〜いいな〜」

「いいな〜て…」

「私も子供欲しい」

「安心しいや、明日から好きなだけ子作りに励めるで」

「そっか!」

「……今のは突っ込むところや」


まあ、事実なんやけどな。
ナマエと繋いでいる手を少しだけ握り直して、共に同じ家への帰路につく。
既に同じ家に引っ越しを済ませている俺達は、明日に結婚式を控えている。
これからずっと二人で歩んでいく人生が始まるのかと思うと、自然に口元が緩む。


「やっぱり女の子がええわ」

「忍足似の男の子がいい」

「…可愛いこと言うてくれるんは嬉しいんやけど、ええ加減呼び方変えへん?」

「明日までしか呼べないからいいでしょ、忍足くん」

「はぁ…まあ、ええけど」




スプリングシャワー
/title by 箱庭


20120514 執筆