男ってみんなこう

「ナマエ〜DVD見ようぜ〜」
「何々、SF?」
「いんやアクション。プラス学園もの」
「へぇ、タイトルは?」
「リカコ先生のイケナイ恋愛講座」
「死ね」

もじゃもじゃアフロを引きちぎらんばかりに掴み、そのままテーブルに頭を叩きつけてやった。
アフロは死ぬ間際「な?アクションだろ……」と余計なことを口走り意識を無くした。

奴が手に握っているそれは、DVDはDVDでもアダルトビデオというやつだ。
よくこんなものを女である私と一緒に見ようと言えるものだ。
もしかして私は女と思われていないのか?と無残なアフロに視線をやると、握られているAVを手に取った。

タイトル通り、白衣を着た女の人が教卓の上に座り、ウインクをしてこちらを見ていた。
これがリカコ先生という人か。
ちなみに白衣の下は何も身につけていないようで、豊かな胸や白い足が惜しげもなく晒されている。

世の男達はこういうのがいいのかと少し考える。
そして次に自分の恋人を思いだし、アイツもこんなのが好きなのか?と思考を巡らせていると急に声をかけられた。


「おい」
「ぎゃあ!」
「…何だ、その反応」


デンジは不機嫌そうに顔をしかめた。
手にはお盆の上に乗った3つのカップ。どうやらお茶を持ってきてくれたようだ。
言い忘れていたが、ここはデンジの家である。


「何だ、それ」
「え、あっ!」


パッとAVを引ったくられた。
慌てて取り返そうとしたが時既に遅し。
デンジはそのAVを見て目を見開いた。


「お前…こんな趣味が」
「なわけあるか!
オーバが持ってきたんだよ!」
「なんだ」

なんだ、って何だよ。
なんでちょっと残念そうなんだ。

じっとデンジを見ているとふいにこちらを向いた。
そしてまじまじとナマエを見て、もう一度AVに視線を戻し、そしてナマエを見た。

口端の上がったデンジからは、嫌な予感しかしない。

「白衣か……」

ニヤリ、という効果音付きで笑うデンジに背筋がゾッとした。
普段から何を考えているのか分からない奴だが、今のデンジはきっと良くない事を考えている。絶対そうだ。

カップの乗ったお盆を机に置き、デンジはじりじりと距離を詰めてくる。
こういう時に限ってアフロは沈黙したままだ。
しまった、もう少し手加減すればよかったと後悔しても、もう遅い。

壁に追い詰められ、逃げられないようナマエを挟むように両手を壁につき、デンジは意地悪そうに笑う。


「今度やるか」
「………な、にを?」
「白衣プレイ」


カッと熱が顔に集まるのが分かった。
それを愉快そうに眺め、デンジはナマエの唇にそっと自分のそれを合わせる。
ゆっくりと何度も繰り返されるそれが、だんだん激しくなり意識が朦朧とし始めた頃。


「なぁ、お楽しみのところ悪いんだけど」


突如聞こえた声に、思考が冷静さを取り戻し冴えわたっていくのが分かった。
デンジの肩越しに意識を取り戻したアフロを確認し、頭が真っ白になった。


「俺の存在忘れてない?」


苦笑いするオーバに「見られた」という羞恥心がわき上がり思わず目の前のデンジを蹴り飛ばしてしまった。

蹴り飛ばされたデンジが、運悪く机の角で頭を打ち脳震盪を起こしたのは、また別の話。




20100930

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