あの日の物語

私には2人の幼馴染みがいる。
一人はトキワシティのジムリーダー、もう一人は伝説のトレーナーと人々の間で噂されている。
その伝説の「彼」は、ある日突然姿を消した。
その日、私は彼と交わした言葉を今も覚えている。

「レッドはこれからどうするの?やっぱり、ポケモンリーグで挑戦者を待つの?」
「いや」
「じゃあ、どうするの?」
「待つ」
「……誰を?」
「トレーナーを」
「…そんなの、ポケモンリーグにいれば何人だって来るじゃない」
「ただのトレーナーじゃない」
「どういうこと?」
「いつか、分かる」
「……いつか、じゃ嫌なの」
「それでも、いつか分かる」


そう言ったレッドの目は遠くを見ていた。
その目の先に彼が待つ何かが見えているのか、レッドは真っ直ぐにじっと見つめていた。




私は意味があるようで無い、しかし意味のあるこの会話を今でも覚えている。

そして、たどり着いた。
彼の言った「いつか」は、きっと今のことを指すのだ。



吹雪の中、ゆっくりと進む。
噂に聞いた彼は、今はこの山に篭っているらしい。

ナマエは腰につけたモンスターボールにそっと触れた。
モンスターボールに入ったポケモン達は、皆レジェンドリボンをつけている。


そして、白い視界の向こうに何かを見た。
近づくにつれて、人であることが分かった。
そして、それは懐かしい雰囲気を身に包みこちらに近づいてくる。


ああ、彼の言っていたことがようやく分かった。


ナマエは立ち止まり、彼を見つめた。


ある日の
物語の続き




吹雪の中、赤い彼が静かに微笑んだ。

20101104
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