どうやらわたくし

電車に乗り込む際、遠くにナマエ様を見つけました。

最近、日課のように毎日ナマエ様を探してしまいます。
それは彼女が毎日このギアステーションを訪れるということを知っているからでもあります。
一目見ることが出来れば、あわよくばお話が出来ればいいと、淡い期待を持ちながら、視線だけが動きます。
ほとんど、無意識のうちに探してしまうのです。

今日は、最近捕まえたと仰られていたメタモンを抱いて、こちらを見ていました。
偶然のことでしたが、ナマエ様と目が合ってしまい、頭は少々パニック状態なのですが、平静を装って軽く頭を下げました。
彼女も笑顔で頭を下げ、何かを仰いました。
この距離ではナマエ様の声を聞き取ることは出来ませんでしたが、口の動きから『がんばって』と読みとることが出来ました。
ナマエ様にそう言っていただけると、なんだか心が温かくなる心地がいたします。
名残惜しいですが、ナマエ様を今日一目見ることが出来て嬉しく思います。

そして、電車に乗り込むと、なんと目の前にクダリが立っておりました。
先程のわたくしの行動を見たのでしょうか、いつもの笑い顔が一段とニヤけているように見えます。
思わず、癖で帽子の鍔を下げれば、いつもよりニタニタとした表情で顔を除きこまれました。

「あれー?ノボリ、何で照れてるの?」

「別に、照れてなど…」

「嘘。ノボリ、照れるといつも帽子を直す」

「…………」


しまった、わたくしとしたことが。
生まれた時からずっと一緒に過ごしてきた、自分の弟には何もかもがお見通し。

もう少し、考えてから行動をすれば良かったと思いましたが、もう遅すぎました。



「ナマエちゃん」

「な、何故それを…」

「ノボリ、本当に分かりやすい!」


ニヤニヤニヤニヤ、クダリの笑顔がこんなにも気持ち悪いと思ったのは初めてです。
クダリ越しにいるこの車両の運転手も、少しニヤついているのでもっと頭が痛い。

わたくし、そんなに分かりやすいのでしょうか。
そんなはずはありません。
クダリに、その無表情はどうにかならないの?と言われ続けて20年以上経ちます。
では何故、クダリにはわかったのでしょうか。


「ノボリ、いっつもしかめっ面」

「……そんな事、分かっていますよ」

「でもノボリ、ナマエちゃんと話してる時、嬉しそう!」

「……え」


そうなのでしょうか。
確かに、ナマエ様とお話をするのは好きですし、お話が出来ればそれはそれは嬉しいです。
いくら無表情なわたくしでも、そんな感情が表に出ていたのでしょうか。
何だか、少し恥ずかしくなりました。


「ノボリ、今も少し照れてる」

「…そうでしょうか?」

「うん。それに嬉しそう」


これは、喜ばしいことなのでしょうか。
無表情だと言われ続けたわたくしにも、ちゃんと表情はあったのですね。


「クダリ」

「なに?」

「どうやら、わたくし…」


ナマエ様の事が、好きなようなのです。


そう言えば、クダリは知ってる、と笑いました。

運転手が何やら「ナマエちゃんって誰ですか」と騒いでいらっしゃいましたが、挑戦者の方がいらっしゃったので、そのまま秘密にしておきました。


(今日ノボリさん、テンション高いですね)
(トウヤ君も、分かるって!)
(……そんなに、分かりますか?)


20110314

電車に乗り込む際、遠くにナマエ様を見つけました。

最近、日課のように毎日ナマエ様を探してしまいます。
それは彼女が毎日このギアステーションを訪れるということを知っているからでもあります。
一目見ることが出来れば、あわよくばお話が出来ればいいと、淡い期待を持ちながら、視線だけが動きます。
ほとんど、無意識のうちに探してしまうのです。

今日は、最近捕まえたと仰られていたメタモンを抱いて、こちらを見ていました。
偶然のことでしたが、ナマエ様と目が合ってしまい、頭は少々パニック状態なのですが、平静を装って軽く頭を下げました。
彼女も笑顔で頭を下げ、何かを仰いました。
この距離ではナマエ様の声を聞き取ることは出来ませんでしたが、口の動きから『がんばって』と読みとることが出来ました。
ナマエ様にそう言っていただけると、なんだか心が温かくなる心地がいたします。
名残惜しいですが、ナマエ様を今日一目見ることが出来て嬉しく思います。

そして、電車に乗り込むと、なんと目の前にクダリが立っておりました。
先程のわたくしの行動を見たのでしょうか、いつもの笑い顔が一段とニヤけているように見えます。
思わず、癖で帽子の鍔を下げれば、いつもよりニタニタとした表情で顔を除きこまれました。

「あれー?ノボリ、何で照れてるの?」

「別に、照れてなど…」

「嘘。ノボリ、照れるといつも帽子を直す」

「…………」


しまった、わたくしとしたことが。
生まれた時からずっと一緒に過ごしてきた、自分の弟には何もかもがお見通し。

もう少し、考えてから行動をすれば良かったと思いましたが、もう遅すぎました。



「ナマエちゃん」

「な、何故それを…」

「ノボリ、本当に分かりやすい!」


ニヤニヤニヤニヤ、クダリの笑顔がこんなにも気持ち悪いと思ったのは初めてです。
クダリ越しにいるこの車両の運転手も、少しニヤついているのでもっと頭が痛い。

わたくし、そんなに分かりやすいのでしょうか。
そんなはずはありません。
クダリに、その無表情はどうにかならないの?と言われ続けて20年以上経ちます。
では何故、クダリにはわかったのでしょうか。


「ノボリ、いっつもしかめっ面」

「……そんな事、分かっていますよ」

「でもノボリ、ナマエちゃんと話してる時、嬉しそう!」

「……え」


そうなのでしょうか。
確かに、ナマエ様とお話をするのは好きですし、お話が出来ればそれはそれは嬉しいです。
いくら無表情なわたくしでも、そんな感情が表に出ていたのでしょうか。
何だか、少し恥ずかしくなりました。


「ノボリ、今も少し照れてる」

「…そうでしょうか?」

「うん。それに嬉しそう」


これは、喜ばしいことなのでしょうか。
無表情だと言われ続けたわたくしにも、ちゃんと表情はあったのですね。


「クダリ」

「なに?」

「どうやら、わたくし…」


ナマエ様の事が、好きなようなのです。


そう言えば、クダリは知ってる、と笑いました。

運転手が何やら「ナマエちゃんって誰ですか」と騒いでいらっしゃいましたが、挑戦者の方がいらっしゃったので、そのまま秘密にしておきました。


(今日ノボリさん、テンション高いですね)
(トウヤ君も、分かるって!)
(……そんなに、分かりますか?)


20110314

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