「えー!」
「クソッ」
お互いに不満を漏らしつつ、それぞれのポケモンのところへ向かい、ボールに戻す。
そしてポケモンセンターへ向かう道すがら、口喧嘩をする。
きょうは調子が悪いだの、次こそは勝つだのお互いに逃走心がむき出しである。
審判だったオーバはやれやれというようにため息をついて後を付いてくる。
これが私とデンジとオーバの、夏の風景だった。
私は夏にだけ、このナギサシティの祖父の家に来る。
その時出来た友達がデンジとオーバであり、毎年夏には2人と一瞬に遊ぶことが常になっていた。
遊ぶと言ってもたいていがポケモン勝負で、毎回私とデンジが引き分けになっていた。
ポケモンバトルでは、オーバが私達3人の中では一番強い。
私とデンジはいつも、この3人の中のナンバー2を争っていた。
ちなみに、この辺りから既にデンジのことが気になっていた。
それも月日が流れ、ナンバー1だったオーバは四天王に、私とナンバー2争いをしていたデンジはジムリーダーとなった。
そして私は、あることを決意し、このナギサにやって来た。
「私、今日からナギサに住むことにしたの」
「…は?」「…え?」
何を言い出すんだコイツは、という目でこちらを見るデンジとオーバはソーダアイスをくわえて固まった。
「フレンドリーショップに勤めることにした」
「は?何おまえ、聞いてないんだけど」
「言ってないもん」
「いや、言ってないもん、じゃねぇって」
「言ってなかったわね」
「いや、言い方の問題じゃねーよ」
ハァァとため息をつくデンジと、額を手で覆ったオーバを見てもナマエはニコニコとしていた。
デンジとオーバがどう思おうが、もはやどうでも良かった。
「あんた達2人と居ると楽しいの」
そう言えば、デンジとオーバは顔を見合せ、困ったように笑った。
20110106