愛を繋ぐ流れ星

スーパーで夕飯のおかずを買ってからの帰り道。
途中で立ち寄った本屋の雑誌コーナーで思わず立ち止まってしまった。
月刊ポケットタイムズ。
全国的に販売されている有名な雑誌である。
全国で行われたイベントや事件のことも書いてあればポケモンやトレーナー特集があったり、新発売のどうぐやグッズなどさまざまな情報が掲載してある雑誌である。

普段は、こういうものは立ち読みをして終わるものなのだが、あるトピックスを見て動きが止まった。
全国ジムリーダー特集。
特集には3人のジムリーダーが取り上げられていた。
カントー地方ヤマブキシティのナツメ、ジョウト地方エンジュシティのマツバ、そしてシンオウ地方ナギサシティのデンジ。

ベラベラと雑誌の特集ページを開くと、まず最初にナツメさんの記事が載っていた。
ナツメさんの写真を見て、綺麗だな〜とぼんやり思いながらベラベラとページをめくる。
次に載っていたのはマツバさん。
穏やかな笑顔が素敵で思わず見入ってしまった。
いいなぁ、マツバさん。きっと優しい人なんだろうなぁ。
デンジももうちょっと優しくなんないかなぁ、と思いながらページをめくる。
次に出たのはデンジ。
しかし、デンジの写真を見た瞬間吹き出しそうになった。

「な、な…な……」


思わず閉じた雑誌をゆっくりと開いてもう一度確認した。
しかし、残念ながら写真はそのまま。
去年の夏の写真だろう。
半裸のデンジ(まぁ水着なんだけど)が海の中に立っている写真だった。
しかも、狙ったのかタイミングが良かったのか、デンジはちょうどカメラ目線だ。
夏の日差しをバックに、水も滴るいい男を全面に押し出している。
しかも、最悪なことにその写真のすみっこに私も写っているのだ。
浮き輪に捕まり、ボケッとした表情で浮かぶオクタンを見ているというどうでもいい光景だった。
ああ恥ずかしい。
デンジがこれだけかっこよく写っているだけ、余計に恥ずかしい。

雑誌を閉じて、棚に戻す。
全国のこの雑誌を買った人達よ、どうかこの写真を見ないでください。

しかし、棚に戻してからピタリと動きが止まった。
雑誌に写っていたデンジの写真、なかなか良かったな〜…。

そしてもう一度雑誌を手に取る。
値段を確認すると、それほど高くないし……か、買っちゃおうかなぁ。


「何してんの?」

「ぎゃああああ!」


耳元で聞き覚えのある声が聞こえ、思わず叫んでしまった。
本屋にいた客も店員もビックリしてこちらを見ている。
原因を作ったのは、私とはいえ恥ずかしい。


「叫ぶな…うるせぇ」

「な、なん…なんでデンジがここに」

「ここにいちゃ悪いか?」

「い…いえ」


するとデンジは私の手にもつ雑誌を見た。
しまった!と思った時にはもう遅く、デンジに雑誌を掠めとられた後だった。


「これ……」

ペラペラと雑誌をめくり、私が先程見ていた特集ページをひらいた。
そしてデンジのページを開くと、本人は無言になった。
表情も無くなった気がする。



「いつ撮ったんだ…この写真」
「……去年でしょ、それ」

「あ、ナマエ写ってるぞ」


デンジは目敏く私を見つけ、そのページを私に見せてきた。
知ってる、というかさっき見たわ、ばか。


「面白い顔してるな」

「誉めてる?」

「誉めてない」

「………」


自分だって、変な顔してるなーとは思ってたよ。
分かっていたんだから、傷を抉るようなことを言うな!
デンジをキッと睨み付け、そのまま本屋を出て行く。
デンジに名前を呼ばれたが、聞こえないふりをして家に帰った。

家に帰る途中、追いかけてきたデンジの手には、先程の雑誌があった。


「……なんでそれ、買ってきたの?」

「いいだろ」


折角、一緒に写ってるんだし?と笑うデンジに魅とれたのは、きっと気のせいだ。


20110110