最悪だ

ジムの仕掛けを攻略出来ずに1週間が過ぎた。
やっと、ひとつ目の部屋を攻略できたのだが、ゴールはまだ見えない。
多分、ジムリーダーが待ち構えているだろう場所がここから見た限り、大分先にある。
ため息をついて項垂れていたら、声をかけられた。


「遅え」


顔を上げれば、次のブロックにジムリーダーと、ピカチュウの格好をした女の子がいた。
ピカチュウの格好の女の子は昨日あたりから見ている。
私が来るのをキラキラした目で待っていたが、あまりに私が仕掛けをクリアできないので、飽きたようで、こちらを見もしない。
その隣に立っているジムリーダーは、もっと冷たい目でこちらを見ている。


「お前…さっさとしろよ!」

「分かってますよ!でもこの仕掛けが……」


うじうじ言ったところで、問題は解決しないどころか、ジムリーダーの機嫌がどんどん悪くなっていく。

こんな手の込んだ仕掛けなんか作るからこんなことになるんだ!と反論すれば、このジムを改造しているのは俺だ、とキレられた。
お前か、こんな余計なことをしているのは。


「ひとつ言いたいんですけど、ジムに仕掛けは必要ですか?
何でポケモンバトルをする施設が、迷路になってるんですか?
何で直ぐにポケモンバトルしてもらえないんですか?」

「趣味だ」

「趣味…!?」



最悪な趣味だ。
私はたかが趣味に振り回されているのか。
もし私がジムリーダーになることになったら、簡素なジムにしよう。
ドアを開けたらすぐにジムリーダーがいるくらいの簡単なものにしよう。
ジムリーダーになる予定もつもりも無いけど。


それにしても、このナギサジムの仕掛けはやたら手が込んでいる。
ここ1週間通いつめて、まだ最初の段階なんて……。
私もそれなに学習するので、もうちょっと進んでいてもいいのだけど。


すると不意に、視界にジムリーダーの持っている工具箱が写った。
何だか嫌な予感がする。


「…すいません、えっとー…?」

「……デンジだ」

「あ、デンジさん。その工具箱は…何ですか?」

「工具箱だ」

「いや、そうじゃなくて…。それ、何で持ってるんですか?」

「ジムの改造のため」

「…………」


まさかとは思うが、そのジムの改造とやらで、この仕掛けが複雑化しているのでは無いか?
だから、こんなにジムに来ているのに、先に進め無いのでは?

私の言いたいことを察したのか、デンジさんはムスッとした表情で、最悪な情報を教えてくれた。



「挑戦者が来なくて暇なんだよ。だから、週1でジムの内装は変えてる」


これ私、ナギサのジムリーダーに挑戦するの無理なんじゃね?


20110505