ダイゴはしっかり睡眠をとったおかげで疲れも大分回復したようだ。
あれだけ爆睡したのは、仕事が片付き今日が休日だったかららしい。
今は優雅にコーヒーを飲みながら、何かの資料に目を通している。
しかし、一向に資料のページが進んでいない。
「…ダイゴ、起きてる?」
「!、起きてるよ」
「………」
今、確実に意識がどこかへ行ってたよね。
普通、話かけられたくらいで肩をびくつかせるわけがないもんね。
「眠いんなら、寝てたら?まだ疲れがとれてないんじゃないの?」
「いや…違うよ」
「じゃあ、どうしたの?」
「………あのさ。ナマエ、」
ピリリリリリリッ
ダイゴが言いかけた時、携帯の着信音が鳴り響いた。
ダイゴの携帯は、ソファーの上に投げ出されており、着信音と同時に震えた。
私は、携帯に表示された名前を、見逃さなかった。
ダイゴは慌てて携帯を取り、電話に出てソファーを立った。
そしてリビングを出て行き、ちらりと私を見てリビングのドアを閉めた。
私は音を立てないようにリビングのドアに近づき、耳をすませた。
かすかだが、ダイゴの声が聞こえた。
「…明日ですか?ええ……大丈夫です。………僕も、あなたにお話したいことがあります。……ええ、……それでは、お昼頃伺います…」
なんとなく聞きとることが出来た内容に、予想がついた。
先程ダイゴの携帯に浮かび上がった名前は、昨日見たお見合い写真の人と同じだった。
あの人に、会いに行くんだ。
パッとドアから離れ、リビングに戻って来たダイゴに平静を装おう。
しかし、頭の中はそれどころではない。
どうしようどうしよう、と考えてみるが解決策は見つからない。
いっそ素直に言ってしまおうか、と思ったが、すぐにそんな決心が付かなかった。
「電話、誰からだったの?」
何気なくを装ってそう聞くと、ダイゴにサラリと「ミクリからだよ」と返された。
(ああ、誤魔化された。)
20110302