ポケフェスその1

エンジュシティは朝早くから人々で賑わっていた。


数ヶ月前、半年に1回ある各地のジムリーダーが全員集合し、会議(それぞれの近況報告)が開かれる場所が、ここエンジュに決まったのである。
毎回ローテーションで回ってくるらしいが、エンジュに決まったのは久しぶりのことだ。
この町のジムリーダーが手を回していたのではないかと私は推測する。
というか、ほとんどの確率でそうだ。

ジムリーダー会議の後は、折角ジムリーダーが集まったということで、会議の後にポケモンフェスティバルなるイベントが開かれる。
そこでは実際にジムリーダーとバトルができたり(バトルと言っても練習のようなもの。しかも、バッチは貰えない)、ポケモンについての質問コーナーや、トレーナーのためのポケモン講座、同時開催されるミニポケモンバトル大会などなど、イベント盛りだくさんである。

ただ、このような大規模なイベントを企画するということは、事前の準備などはそれはそれは大変である。

それゆえにマツバはポケモンフェスティバルがエンジュで開かれると決まった時は物凄く嫌そうな顔をした。
だが表向き、彼は強くて優しいイケメンジムリーダー。
すぐにマツバスマイルを発動させ「喜んで」とこたえていた。
ポケモンフェスティバルの開催地決定の連絡を受けた後、通信の電源を切った瞬間舌打ちをした彼のことは今でも忘れない。
今まで長い間付き合ってきたが、あれほど嫌そうな表情をするのは珍しい。

後程、その理由を嫌という程知ることになった。
例によってポケモンフェスティバルの下準備をマツバに押し付けられ(脅迫され)、それはそれはハードな数ヶ月だった。
今回はミナキもマツバにいいように使われていた。
マツバも珍しく仕事に付きっきりだったので、このイベントの重大さを身をもって知った。


準備をすること数ヶ月、本日はポケモンフェスティバル開催日である。

私もポケモンフェスティバルの警備に回され、今はミニポケモンバトル大会の会場に配置されている。

今はジムリーダー会議中なので、まだメインのイベントは始まってはいないが、人々はまだかまだかとうずうずしていた。


「あ〜早く始まらないかな〜」
「ウィン?」

私の隣に立つウインディは首をかしげた。
ウインディはいまいちイベントのことを把握していないようである。


「ウインディ、上手くいけば久しぶりにポケモンバトル出来るかもしれないよ」

「ウィン!」

ウインディは嬉しそうに吠えた。
ウインディだけではなく、腰につけたモンスターボールもガタガタと震えた。
このこ達も久しぶりにポケモンバトルがしたいのかもしれない。

「警備員さん」
「はい?」


後方から声をかけられ、くるりと振り向くと、あれデジャブ?

前にもマツバが今のように話しかけてきたが、今回はマツバではない。


「久しぶり」
「…………」


本当に突然過ぎて、何も言うことができなかった。

5年ぶりにダイゴさんと再会しました。

20101019