03

「いや〜ダイゴに会えてよかったよ」

「それはどうも。で、何でここにいるの?」


久し振りに再会したダイゴは不機嫌そうだった。
というか、絶対に不機嫌だ。
眉間にシワが寄っているもの。

「ツツジと同じこと言うんだね…」

「当たり前だろう。君、ホウエンから引っ越して何年経ってると思ってるの」

「5年?」

「そうだよ。なのに、何でこっちに来る前に連絡のひとつも寄越さない?」

イライラしているのがびしびしとこちらに伝わってくる。
何でこんなに久し振りに会ったのに、説教をされているんだ私は。

「驚くかなー…と」

「ああ、驚いたね」

「す、すいませんでした…」

「………反省してる?」

「はい」

「……じゃあ、いいよ、もう」

ハァ〜とため息をついて、ダイゴは私のメロンソーダを飲んだ。
ちょっと、何勝手に飲んでるんだ。

「自分で注文しなよ」

「少しくらいいいだろう。
それに僕、そろそろ帰らないといけないんだよ」

ダイゴは腕時計を見て、席を立った。
そして財布から紙幣を出すと、それを机の上に置いた。


「それ、飲み物代。おつりはあげるよ」


流石は金持ちだ。
あのメロンソーダ一口飲んだだけで紙幣を出すとは。
これだけあれば、スパゲッティの会計をしてもお釣が出る。
しかし、一万円は少し大金過ぎないだろうか。


「いいよ…一万円も。せめて千円にして」

「持って無い」

「………」



これが金持ちと庶民の差なのか。
私なんか千円札はあっても一万円札なんて滅多に財布に入っていないぞ。



「いいよ…代金くらい自分で払うから。それよりさ……」


チラリとダイゴを見ると、ダイゴは嫌そうな顔をした。
もしかして、私が今から言おうとしていることを読み取ったのか?


「嫌な予感がするんだけど…」

「うん、多分その通りだと思う」

「……何?」

「今晩泊めてくれない?」



ダイゴが遠い目をした気がするのは、気のせいではないだろう。



20110107