故に、何をやっていても様になる。
体育の時間、男女混合のチームを組んで、やっていたバスケットボールのゲームでも、奴はすばらしい活躍を見せる。
ぽんぽんゴールにボールを入れるし、かと言ってでしゃばらず、チームメイトに的確にパスを回す。
相手のチームはマツバのおかげで雰囲気がよく、チームワークも抜群だ。
マツバ凄いな〜、なんて考えていたらパスが回ってきた。
「ナマエ、パス!」
「あ、うん!」
慌ててしまい、うまくパス出来なかったが、相手の子がバスケットボール部の子だったので、なんとかボールを拾ってくれた。
そのまま、ゴールに向かって走っていく様はとてもかっこよかった。
それをぼんやりと見ていたら、走っていた勢い余って転んでしまった。
「いたたたた………」
「何してる」
「……げ」
見上げれば、笑顔のマツバが立っていた。
そこ、笑うところじゃ無いんだけど、と思いつつ立ち上がる。
「流石ナマエ、何もないところで転ぶなんて、君は天才だね」
「嬉しくないんだけど」
「そうかい、じゃあ嬉しくなるような事を教えてあげようか」
「え、何?」
「君のチーム、シュートに失敗したよ」
「………」
それ、マツバのチームが嬉しいだけじゃない?
そう言おうとしたら、マツバはチームメイトからのパスをうけて、走って行った。
まあ、シュートを決めるマツバもかっこいいことで。
応援している女子がキャーキャー言っている。
「はぁああ……」
「何ため息ついてるの」
友人のユウコさんが嫌そうな顔をしてこちらを見た。
ユウコさんは私のチームメイトである。
ちなみに、何故彼女の事をユウコさんとさん着けで呼ぶのには、わけがある。
それくらい、彼女には逆らえない。
「いいよねー彼氏があんなにかっこよくて」
「……そうでも無いよ」
そりゃあ、皆の前ではいい人ぶっているから、そう見えるだけだ。
実際は、我が儘で俺様で、めちゃくちゃ意地悪な奴なのだ。
そう言ってやりたいが、言ったところで信じてはもらえないだろう。
「ところで、噂を耳にしたんだけど」
「え?」
「この前、家の前で濃厚なキスしてたって本当?」
「ぶっ!」
思わず、吹き出してしまった。
何でそれを、と思ったが、噂になっていると聞いて恥ずかしくて何も言えなかった。
「結局のところ、あんた達ってどこまで進んでるの?」
「…………」
ニヤニヤしているユウコさんにも何も言えなかった。
20110325