2011リドル誕生日



ただいま私は談話室である人を待っているところ。いつもならもっと自室でのんびりしているのだけど、今日は特別な日なのだ。


今日は私の恋人の誕生日。

私の恋人、リドル君。リドル君は女の子から絶大な人気を誇っている。その理由は彼を一目見れば分かるはずだ。整った顔立ちにすらりと高い身長。人当たりの良い笑顔に(彼の得意技のひとつ)紳士的な物腰。その上ホグワーツ始まって以来の秀才という肩書き。
優等生をそのまんま形にしたようなリドル君。

でもその性格は表向きの彼であって、裏向きの彼はスリザリン寮の純血一族をほぼ従える闇の帝王。

世界までをも手に入れようとしている。


そんな彼はホグワーツの女の子からだけでなく同性や先生方からも人気だ。


それに加え私は平凡を形にしたような生徒。
成績も中の上ぐらいだし、家系もブラック家やマルフォイ家のような名声もない。


そんな立場がぜんぜん違う私たちが付き合って納得する子は少数だった。私の仲の良い友でさえもだ。


リドル君が頭良いのは知ってたけれどこんなにも女の子から好かれてるってのは知らなかった。だから付き合い始めは陰湿ないじめがひどかった。特にスリザリンの女の子なんてそう。
あれはさすがにきつかったけれど、リドル君の一声でいじめがぴたりと止んだのはすごく驚いた。



そのリドル君の誕生日。前から「何か欲しいものでもある?」って聞いても「今は特に何も」と、返事が帰って来るばかり。

そんなリドル君に対してのプレゼントを考えに考え抜いた結果。あるひとつのプレゼントが思い浮かんだのだった。


「リドル君に私をプレゼントだいさくせーん……」

呟いてみたもののやっぱり恥ずかしいか…


「おはよう、なまえ」
「おっ、おはよリドル君」

男子寮の扉から少し眠たそうな声で本日の主役がご登場なさった(きゃーっ)

「おっはよー、なまえちゃん」
リドル君より先に私のソファに素早く座ったのは、リドル君の一番のお友達、もとい右腕。ちゃらちゃらしてるように見えるけどリドル君に負けず劣らずの腹黒さだ。

「なまえちゃんからのリドルへのプレゼントは何かにゃー?」

「まだ内緒なの」

そういうと、ちょっと驚いたような顔をした後、にやりと企んだような顔をして

「なになになまえちゃんのプレゼントって自分をプレゼント☆とかそーゆーノリ?」






「………」





しばしの沈黙。

「あはははは」

いつもなら「なに図星?」とからかってくるのだけど、今日ばかりはそうは言ってくれなかった。

ちらり、と視界の端にリドル君の姿が見え、その顔はとても不機嫌そうな顔をしていた。

「しっ、失礼しますっ!!」


は、恥ずかしっ!!

あーもーやだやだっ!



目の前が涙でかすんでくる。
「はずっ・・・・」
リドル君と来ようと思っていた場所に腰をおろした。ホグワーツの一番高いところにある屋根。
学校全体を見渡せて、それから学校のもっと向かうまで見える特別な場所。

ホグワーツの校庭を真っ白に染めた雪が今ではとっても憎く見えた。

どこに行った私の計画。



「もう、やだ」



「寒くないの?」
聞き慣れた声が、降ってきた。
それはひどく優しくて、小さな子を慰めるような声色だった。


私を追っかけてきてくれたのだろうか。



「寒い……」

ローブも着ずに飛び出してきたものだから、この真冬にホグワーツの屋根に座っているのは結構な寒さだった。


「なまえも本当に馬鹿だよね」
「…うっさい」
拗ねる元気があるのを確かめられたからか、さっきとは打って変わって呆れた声に変わっていた。

「顔、上げてごらん?」
泣いてしまった事実は変わらないけど、泣いた顔は見られたくなくて、俯きを通す。
「僕にプレゼントあるんでしょ?」
「…無いもん」
「なまえをプレゼントしてくれるんじゃなかったのかい?」
「………」
「ここで僕と一緒に過ごそうと思ってたんでしょ?」

「そうだけど………」

パチンと軽快な音がして、辺りが暖かい空気に包まれた。

「ね、なまえ。拗ねてないで顔あげなよ」


やっぱりリドル君の声は優しくて。

ふ、と顔をあげればそこにリドル君の優しく微笑んだ顔があって。
涙の跡をリドル君の指が優しくなぞった。



リドル君がふわっと笑い(それはもう芸術品のように)

「なまえ、大好きだよ」


そこからあとは、全てがスロー再生だった。
リドル君の整った顔が近付いてきて、私の口先に触れる。



触れるだけの優しいキスだった。



それだけでも私にとっては甘く感じられて。

「なまえ、キスをするときは目を閉じるものって知ってた?」

と、ちょっと意地悪な事を言っても気にならなかった。

「リドル君、」

私がそう呼びかければリドル君はいつだって振り向いてくれる。
今日も例外では無かった。

「何、なまえ?」


「私も大好き、ハッピーバースデー。リドル君」

私に出来るだけの極上の笑顔で、そう言えば


「なまえ、もっかい」

と、再びリドル君と私の唇は重なった。

今度は私もしきたりを守り目をつむった。
やっぱりリドル君とのキスは甘くて、私の知っている限りでは、これ以上こんな甘く幸せな物は無かった。





ハッピーバースデー、リドル君


(リドル君、あんなに不機嫌そうだったのに、追っかけてくれてありがとう、です)(あれは僕の誕生日なのに他の奴といちゃいちゃするから)(!?)(君が悪いんだよ)(リドル君ってば、嫉妬したの?)(………)


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