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陽が沈み始めた頃に、舞良は期待を諦めた。
理由は想像も出来ないが、響は来ない。
暗くなった部屋で、電気を付ける気にもなれず、月明かりが差し込む窓の下に座り込んだまま舞良はじっとしていた。
この一日で何度見たかわからない時計を確認すると、夜の七時を短針がまたいでいた。
《当日の7時にホテルのロビーにある噴水の前で待ってて、俺が見付けるから》
噴水の前で待っているかもしれない朱里を想像した。
落ち込んでいるかもしれない。
こんな自分が来ないという事で。
響は迎えに来れなかったのか来なかったのかはわからないが、自分が来ないという事を朱里に伝えてくれるだろうかと舞良は思った。
来ないとわかったら朱里は別の誰かとパーティーに参加するのだろか。
あの笑顔を向けて?
失望で舞良は指一本すら動かす気になれなかった。
この指に朱里の手を取る筈だったのに。
舞良がその指を見るのすら悲しくなり、目を閉じた時、窓の向こうで車の音がした。
通り過ぎず、家のすぐそこで止まる音だ。
舞良は脱力していた全身に、一気に電気が走ったように思った。
立ち上がり、窓の外を見ると、一日中待ち望んだ人が門から玄関に向かって小走りで駆けて来ているのが見えた。
舞良はその姿が見えなくなるまで見て、見えなくなると今度は自分の部屋のドアに体を向けた。
すぐに駆け足が聞こえて来て、ドアの向こうに立つ音が聞こえた。
慌てた様子でガチャガチャと鍵を開けると、響は舞良の部屋に飛び込んで来た。
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CINDERELLA STORY