圭が最初の彼氏を俺に紹介したのは、中学二年の時だった。わざわざ紹介なんかしなくても、知っている奴だ。同級生だよ?
だから、慣れてる。これで三回目なんだし、今さら「何でわざわざ紹介するの?」とは聞けない。紹介されるのがあんまり嬉しくない、とも言えない。
意味がわからないのはここが俺の家って事と、俺が休日の自由な睡眠を邪魔されて起き抜けのスウェット姿で圭と圭の新しい彼氏にお茶をいれている事。

「一昨日、付き合う事になりました」
「はあ、うん」

俺の部屋で、何故か正座している圭と圭の彼氏は、テーブルを挟んで俺と向き合っていた。

「ミヤビは私の兄弟みたいな物だから」
「…よろしくお願いします…」
「え…あ、はい」

同い年の幼なじみなだけで、俺は別に圭のお兄さんでも何でもないのに、敬語で挨拶されては困る。しかし今回は知らない顔だった。他の高校の男らしい。

「今日は初デートだから」
「うん…知ってるけど」
「映画観てくる」
「ああ、行ってらっしゃい」

圭は笑顔で今日の予定を言った。
今日の圭は髪の毛を頭の高い位置でまとめて、お団子にしている。しっかり化粧もしている。それとスカートが短い。張り切ってるね。口に出しては言えないけれど。
彼氏は、今回もまた軽い感じがする。薄い茶髪だけど、染髪が許されるような学校と言えば近くの小さな私立校だろうな。あんまりいい噂を聞かないんだけど。圭、騙されてるんじゃないだろうか。
本当に挨拶だけして、二人はせっかく俺がいれたお茶も飲まずにデートに出掛けて行った。だから、毎回思うけれど、この行事は必要なの?
玄関で見送った二人を、俺は自分の部屋に戻って窓から見た。一度も笑わなかった彼氏も、すっかり笑顔を取り戻して、圭と話していた。そして彼氏は笑顔のままで手を差し出した。圭は少し迷って、照れ笑いをしながらその手を握った。その顔は、まさに女の子だった。
その時、圭はたまたま俺の部屋を見上げた。二人を見ていた俺と見上げた圭の目が合った。圭はとたんに笑顔をさっと消したのが見えたけど、俺も慌てて窓から離れたのではっきりしなかった。

あんな顔、するんだな。そもそも意地っ張りで独断的な圭が、照れるなんてしおらしい事をするなんて。俺がいつも見ている圭は、ふてくされているか、ほくそ笑んでいるか、平常心だった。あんな顔をするなんて知らなかったな。
今までの彼氏は圭の色んな姿を見ているんだろうか。俺はこんなに付き合いが長いのに、見せて貰えない圭の一面を、たかだか何日か何ヶ月の付き合いの男が見れるなんて、何かずるいな。
圭が俺に見せない顔ってどんなだろうか。…まさか、まだ高二なのに彼氏達と何かやったりしてないよね?あの軽そうな歴代の彼氏達が、圭に襲いかかったりしてないだろうか。圭はあんな短いスカートで、危機感なんてないのに…いや、圭は誘っているんだろうか。あんな風に照れた顔をして?
急に行き着いた考えに俺は、久しぶりに圭に対してイライラした。まだ子供だろ、そんな事するなよ、されるなよ。今までの彼氏も…今の彼氏も、圭にむやみに触ったんだとしたら許せない…。

しまった、想像してしまった。

そうか、圭は女の子だ。今の今まで、幼なじみだった、一番近くで見て来た妹のような圭が、女であると意識してしまった。圭のそんな姿を想像してしまったなんて、ばれたら圭に殺されてしまう。
しかも、もっと問題なのは、その圭の姿が頭を離れなくなったということ。そしてそんな姿、他の男に見せたくないということ。

それを、俺の物にしたいということ。




近すぎて見えなかった



written by ois







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