お話
カツ、カツ…
軽そうに、重い足取りでバーンはある場所を目指す
扉に手をかける
今回はすんなり開く。あ−何やってんだろ、俺。
「…!!!君は、」
研崎の驚いた姿に眼もくれず、ただある物を捜し続ける
何か言われているのは解るが内容が全く耳に入らなかった
「…、あった!!これだ!!」
規則だだしく、綺麗に瓶が並ぶ棚の中から、ひとつ列を乱して中身が明らか少ない、いかにも使用後のような小瓶を手に取る
そして外にむかい一心に走りだす
(ガゼル…っ)
研崎が何か言っていたようだが何も入ってこれないほど俺には余裕がなかった
(ガゼルが居ない…そんな世界なんていらねぇよ)
もう覚悟は決まっていた
(ガゼルの事…忘れなければ俺は辛くて生きていけねぇ)
誰も居ない樹海の滝の側。
一人座り込んで手にある瓶を飲み干した
(やりなおそう、生まれ変わろう…ガゼルの事、忘れて…みんなのことも…)
涙が流れた。そりゃあもう、沢山と
ああもうすぐ何で泣いてたのさえ、思い出せなくなるんだな…
「グラン様、旦那様…只今捜索班が南雲晴矢を発見しました」
「それで…バーンは!!晴矢は無事なのっ!?」
静かに首を、横に振る捜索班のリーダー
すっ、と持っていたものを俺に渡した
そこにはきっと晴矢が飲んだのだろう服用したら生きる筈のない空っぽの瓶と
お日様学園で撮った幸せそうに笑った皆の写真。
(馬鹿だね、君も…この僕でさえも)