恋の
何度も何度も心の中で一文を繰り返す
(好きだ、ガゼル)
ガゼルの部屋の前に立つ
心臓が爆発しそうだ
扉に手をかける、5秒制止。
扉を引く。
ガチャッ
「………あれ、ガゼル…??」
部屋の中はもぬけの空っぽで
元々なにもない部屋だったが今は跡形もなく全てが無いように見えた
(嫌な予感しかしない…)
とりあえず他のダイヤモンドダストの連中のところへ行ってみる
「アイキュー!!レアン!!リオーネ!!誰かいねぇのかっ!?」
誰からの返事もなく虚しく俺の声が響くだけだった
どうしようもなく黙り込んでいると
何処からか足音がきこえてきた。
コツコツコツ…
(……誰だ?!)
−コツン。
「あれ?バーンじゃないか」
(…グラン?!)
「何やってるの?敵の部屋の前で。」
「敵?!んなもん関係ねぇ!!なあ、Dダストの奴らがいねえんだよ、何処行ってるかしらねえか?!」
「…………」
空気が死んだ、気がした
「まさか…「追放だよ」」
(…!!!)
気が付いたら走りだしていた
ガゼルを捜しにいくために
「捜したって無駄だよ。他の連中はともかく、キャプテンであるガゼルは…」
足が、ぴたりと止まる
「記憶が飛んでるからね」
聞きたくなかった
聞いてはいけなかった
聞くべきではなかった
聞かなくてよかった
俺の中でなにもかもが壊れた気がする
あの時、流星群を見たときのガゼルを想いだす。涙が止まらなく流れる。拭うことなんか頭になかった
ガゼルが呟いた、1分前の俺が理解できなかった言葉たちの意味が、今なら全てが理解できた。
要するに別れの言葉だったのだ
「サッカーを続けてほしい」
「私の事、忘れないでくれ」
「バーンの事、好きだ」
(俺は………俺、は)
バーンは先程とは違う、とても落ち着いた足取りである場所へ向かった
グランはなにも言わず、追いかけもせず、去っていくバーンの後ろ姿を見つめるだけだった。