彼女は何人もの人間が自分の目の前で死に、また新しい人間がここへ来る…そんな教団の生活と、エクソシストのさがに疲れたと言った。沢山のものを見て来て沢山のものを失って、得るものはあったけれど其れはきっと信じてしまえば失うときに辛いもので、それでも信じ続けなければ自分を奮い立たせるものは何一つとして無くて、そして、その連鎖の中で唯一自分を支えていたカレルが死に、もう自分には何も無くなってしまったと自嘲した。そして、あの日からというもの、どんなに危険な任務に出ても酷くて軽症で帰還して来ていた彼女の身体にはアクマの銃弾や、鋭利なもので斬られたような傷跡が増えて行った。理由なんて聞かなくても解かった。そして、浮き彫りになる。










俺はカレルの代わりにはなれない。










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「神田、寝坊、だぜっ」


「ぐっ!」


体にドスリと重みがかかり、目をかっぴらく。何事かと思えば、彼女には大きいサイズのよれた寝巻きのシャツ一枚だけを身に着けたウタが己の上に寝転んでいた。彼女よりも先に自分が目を覚ます事が多いので寝過ごしたか、と時計に目を向けると何時もなら朝食を採っている時間帯で、つい溜息が零れた。


「おはよう。」


そう自分の上で微笑むウタ。触れるだけの口付けを交わしてから、束ねていない髪の毛を撫でられる。他の誰かなら六幻を斬り付けるところだろうが、ウタの表情はとても幸せそうで、つい許してしまう。


「…内臓破裂するかと思った。」


「おはようっ」


「本気で飛び乗っただろ。」


「おはよう!」


「………はよ。」


毎朝恒例の挨拶を済まし、頭を撫でて上から退かす。彼女もまだ寝起きのようで、目を擦り裸足をペタペタと鳴らしながら洗面台へと向かった。そんな彼女の背中を見つつシャツを着ながら、自分も洗面台へ向かう。寝癖で髪の毛がぴょこぴょこ跳ねていて、後ろに立てば其れが自身の顎を掠めくすぐったい。何だか愛らしく感じ、歯ブラシを口に運ぼうとするウタをすっぽりと抱きしめ唇を落とす。正直な所、先程のキスでは物足りない自分がいた。舌を這わせ口内を犯して行けば、壁によりかかる形となった彼女が着たばかりの皺の無いシャツに手をかけて来、ボタンを外し始める。其れと連動するように彼女のシャツの中に手を入れて、内腿を撫で上げる。


「ん…っんぁ、」


「も少し、口開け…」


小刻みに震える全身に追い討ちをかけるように、更に深く口付ける。すると、足から力が抜けてしまったのかふにゃ、と体が前のめりに倒れて来た為、其れを受け止め抱き上げる。直ぐそこのベッドにそっと下ろして、再び唇を重ねながら彼女のシャツのボタンを外して行くと、首に腕を回され。


「神田、どこ、にもっ」


「解かってる、行かない。」


「んぁ、ふ、あいし…っ、」


「愛してる。」


確認するかのように、言葉を掛けられる。それと同時に肩から腰に、斜めに刻まれた傷跡が酷く憎くなった。歯を立てて、其処を吸う。小さく声を漏らして其れに耐える彼女の姿は自分にしか見られないものだ。あいつにすら、見れない姿。ほんの一瞬の優越感。


「ぁ…っ、あ…っ、かん、だ」


「…く、」


「…あ…いして、る…っぁ、」


「解かってる、解かってるから…」


「も…っ、もっと…っ」


「…っ、力、抜け…」










しかし、彼女が言う『愛してる』も、この行為も、一見愛があるように見える二人の関係ですら、所詮、仮初に塗りたくられた幻想でしか無いのだ。何時からだろうか、現実が怖くなったのは。










第二章 何時かは醒める夢 01
(もう、後戻りも、進む事も)
(何も出来ないんだ。)





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あとがき

これってRいくつ?18?15?
教えてくれたら嬉しいです。
この先こんな感じで進みます。




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