GHOST NO.1 1/3 幼い頃−… 生きる事も、死ぬ事も許されないこの場所が辛くて、一度拘束具を解いて抜け出そうとした事があった。 そんな時、【彼】が現れた。 『こんにちは、リナリー。』 膝に埋めた、涙で濡れた顔を上げる。 頬まである白に近い金髪の長い前髪の間から左目を覗かせて、まだ大人になりきれていない【彼】はニコッと微笑んだ。 ヒラヒラと左右に振られる両手の平。 『僕の両手には種も仕掛けもありません。 でもね?』 そう言葉を区切った刹那、【彼】の掌からふわりと紫の蝶が飛んだ。 「うわぁ…っ」 目を輝かせ、腕にしがみ付く。 「すごぉい!!もう一回!!」 【彼】は一瞬驚いた顔をした後、直ぐに微笑んで、私の頭を優しく撫でた。 骨ばった、細い手だった。 久々に人間らしい感情を抱く事が出来た私は励まされたようで、兄さんが教団に来る時まで間其の記憶だけを自分の支えにしていた。 でも、【彼】とはそれっきりだった。 教団内を探してみても、団員の名簿を見てみても、【彼】らしい人物は見当たらなかった。 …今でもまだ鮮明に覚えている、別れ際の約束。 『僕と会った事は誰にも言っちゃ駄目だよ。 護っていれば、その内また会えるから、ね?』 すっかり泣き止んだ私の頬を撫でて。 其の言葉を信じて私は未だにあの時の約束を守り続けている。 ◆◆◆◆ 入団して暫く経った頃。 ブックマンJr.として何処に行っても起こっている争いを目の当たりにし、そんな人間達を愚かだと…全てを嫌った事があった。 その時、【奴】が現れた。 『こんにちは、ラビ。』 不意に呼ばれ、俯いていた顔を上げる。 頬まである白に近い金髪の、長い前髪の間から左目を覗かせている。 年齢は俺と同じくらいだろう。 【奴】はニコッと微笑んだ。 『邪魔して悪かったね、プレゼントがあるんだ。』 ヒラヒラと左右に振られる両手の平。 『僕の両手には種も仕掛けもありません。 でもね?』 そう言葉を区切り、一度握った掌を再び開くと【奴】の掌には俺が前から欲しがっていた、かなりの遠出をしなければ手に入らないピアスがあった。 「ちょーだいさ!!」 『じゃあ、一つ約束してくれる?』 「するする!くれるなら!」 【奴】は先程と変わらない微笑みを浮かべながら俺の耳に手際良くピアスをつけながら言った。 『"人"の事を嫌いになるな。』 何だか自分が考えている事を探られたようで心がもやもやし、何で?と問えば 『何時かラビにも解かる時が来るよ。』 そう答えて俺の頭を撫でた。 あの頃はまだ結んだ約束の意味を理解出来ずにいたが、数年経ち自分に大切な仲間が出来てやっと解かったような気がする。 …でも、【奴】とはそれっきりだった。 教団に関するありとあらゆる資料に目を通し【奴】の事を探してきたが、それらしい人物は見当たらなかった。 …今でもまだ鮮明に覚えている、別れ際の言葉。 『僕と会った事は誰にも言っちゃ駄目だよ。』 「じゃあ"自力で探す"ならどうさ?」 『それはちょっと無理かな。』 「何でさ?」 『僕は誰にも 見つけられないからだよ』 NO.01 |