05.




し…んとした静寂の中、聞こえてきた声に射抜かれる。


今、華さんは何て言った。間違いでなければ俺は今告白をされたんだよな。


言われた言葉の一字一句が細胞から皮膚へと染み込んできて全身がカァっと熱くなる。


流石に数ヶ月間あからさまに避けられていた時は地面にのめり込んでしまうんじゃないかってくらい落ち込んだ。


だが最近は金田のおかげで塾帰り一緒に帰る機会ができて話すチャンスも増えて、もしかしたら華さんもって考えもなかったわけではない。


でもこの気持ちは俺から伝えたいと思っていたから拍子抜けだ。


金田が知ったら笑われそうだな、男を見せるって言ってたのにな、、。


華さんも華さんだ、こういう時ばっかりカッコイイんだ。昔から何かと俺に張り合おうと躍起にになっていた華さんの負けず嫌いな所がここで発揮されちゃうんだからなあ。


あんな凛としてカッコよく告白する女の子もいるんだな。


張り合うも何も俺は華さんには昔っから負けてばっかだ。そういう華さんも好きだけれどちゃんと応えなきゃ、、だな。


「華さん…」
「は、はい!」


寒いからだろう、口の前で息を吐いている華さんの両手をぎゅっと包み込んで名前を呼ぶと、華さんは先ほど告白をした凛々しさは何処へやら、俺を見上げて少しばかりの動揺と困惑の表情を向けた。


ああ、凛とする華さんも好きだけれど、こうやってちょっとびっくりして、でもどうしたらいいか分からなくてあたふたしている彼女を見るとたまらなくなるんだ。


「俺にだってちゃんと言わせて」
「うん」
「まず…あー、告白ありがとう、う、嬉しかった」
「うん…」
「それで、俺も、、、華さんのこと、好きなんだ」


もう一度訪れた静寂。


と、今度は息を飲む音がした。


「ほっほんと?本当にマネッ…旭くんも好き?」
「はは、呼びにくいんだからマネッチのままでいいよ」
「嬉しい!いや、信じられない、」
「し、し信じられないってなんだよ」
「だってマネッチって奥手そうだし、そういう好きな人とかいないんじゃないかってちょっと思ってて…さっきも勢いで告白しちゃったから、ごめん」
「い、いや、謝らないで、、なんかごめん」
「あっははは、大丈夫、私すごく幸せだから」


えええー、俺は華さんに何だと思われてたんだ。ひょっとしてからかわれているのか、嫌、とりあえず結果オーライだから良かったけれど、


拍子抜けな所もあるけれどやっぱり嬉しいものは嬉しい。どんな表情もどんな思いも受け止めるから華さんには華さんでいて欲しい。


未だ両手に包み込んでいる華さんの手を更にぎゅっとすると華さんは少しぎょっとしたような顔をして困惑の赤面顔を下から向けてくる。


それを見ていると俺まで顔面が火を吹き出しそうだけれどこんな熱さなら大歓迎だ。


「じゃあ、また明日ねマネッチ」
「おう、また明日」


ただのさよならの挨拶だけでもこんなに幸せな気持ちになれるんだなと思いながら…あのT字路から別れた真っ黒な帰り道も何故かほんのり明るい気がして、


夢見心地のまま帰路につく。



ーそこにあったもの、いまここにあるものー
お花畑




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