最近、僕は後輩のあいだで人気があるらしい。





今まで、僕の隣に魔法界の英雄と天才優等生がいたこともあって、僕自身に注目されることはあまりなかった。

確かに僕は英雄でもなければ特別勉強ができるわけでもない。

ずば抜けた才能も特にないし、しいていうならチェスが得意なくらいで。


だから、今までハリーたちに一度も嫉妬したことがないといえば嘘になる。でもやっぱりそれ以上に大切な友達だった。

それに、最近はこの事もあまり気にならなくなっていた。
というかそんなこと忘れてさえいた。

まぁ僕も大人になったってことだね。



そのおかげかな、僕にもとうとう後輩のファンと言うものができた。

やっぱりハリーにはまだ遠く及ばないだろうけど、でも廊下を通ると何人かの女子が僕に黄色い声を飛ばしてくれたりする。

さっきもプレゼントを貰ったばかりだし、ラブレターを貰うことだってしばしばだ。


でもこういう風になったのはいきなり、と言うかいつのまにかってかんじで。

欲しい物って、本当に欲しい時は手に入らないのに忘れたころにひょいっと転がりこんでくるんだなあって。
そんなことを思った。




「みて、グリフィンドールのロン・ウィーズリー先輩よ!」
「きゃあ!ほんとだわっ!」


ほら、また聞こえてきた黄色い声。



正直、結構嬉しい。

最近はそうでもなかったけど、こうなる事を強く望んでいた時期だってあったわけだし。

そもそも、自分をかっこいいと言って慕ってくれるファンがいることが気に食わないわけがない。


まぁ、全部嬉しいのレベルで終わる話なんだけどね。




「ロン!」

すると、前方に現れた黒髪の親友が僕の名前を呼んだ。


「あ、ハリー!探してたんだぜ。」
「僕もだよ、なにせロンがいきなり姿を消すからね。どうせまた告白でもされてたんだろ?」
「違うよ、プレゼントを貰っただけだ。僕もてっきり告白かと思ったんだけどなぁ。」

僕がそう言って笑うと、ハリーが冗談っぽく ハーマイオニーが聞いたら怒るよ、と言ってきた。




そう、僕にはハーマイオニーという彼女がいる。

だから、後輩たちの黄色い声もプレゼントも告白も、すべて嬉しいってだけで終わってしまうんだ。


それ以上の感情を抱く事もないし、ましてや気持ちに答える事なんてできない。

僕にはハーマイオニーがいるからね。

たまにハーマイオニーと別れて私と、って言ってくるしつこい子がいるけど、流石にそこまでくると迷惑にしか感じない。



「そういえばハーマイオニーは?てっきりハリーと一緒にいると思ってたんだけど。」
「あ、えーと…トイレにでも行ったんじゃないかな。」

少し視線をそらしたハリーを見て、僕はすぐに感づいた。

「ほんとにトイレ?」


僕の問いかけにハリーはひとつため息をついて、不機嫌にならないでくれよと言って、続けた。

「君と同じ。さっき上級生に話があるって呼び出されてどこかにいったよ。多分告白されてるんだろうけど。
ついでに言うとイケメンだった。」
「…やっぱり。」


そう、最近になって人気が出だしたのは僕だけじゃない。ハーマイオニーもだ。

しかもハーマイオニーは上級生にも人気がある。
まったく、上級生とかたちが悪いにも程があるじゃないか。


「だから言うのやめとこうと思ったんだよ。ほら、君またいつもの不機嫌な顔になってるじゃないか。」

おもむろにまたため息をついたハリーには僕が不機嫌なのもお見通しらしい。
まぁ当然だよね、これ毎回だもん。





今までハーマイオニーは頭がいい優等生ってくらいしか周りに思われてなかったはずなのに。

成長して雰囲気が変わって女の子らしくなった彼女はみるみるうちに可愛くなって。
だんだん人気が出だしたんだ。


勿論もともと可愛いかったけど、確かに最近のハーマイオニーは得に可愛い。

今までずっとツンツンしてた彼女だけど、最近は少し素直な一面も見せるようになってきて。…まだツンの方が圧倒的に多いけどね。

でもそういう不意打ちの可愛さとか、もうたまらない。


あと、最近は髪型のアレンジが増えたみたいで、新鮮な彼女もよく見れるようになった。

この髪型どう?…ロンのために、チャレンジしてみたの。

なんて少し赤い顔で言われた時は、あまりの可愛さと愛おしさにどうにかなりそうだったよ。



だからね、ハーマイオニーが男子に人気なのはあたりまえの事だと思うよ。だって可愛いから。

むしろ僕からしたら気付くの遅すぎだろってぐらいだ。



ハーマイオニーも多分、人に好意を向けられるのが嫌な訳じゃないと思う。

実際僕もそうだし、僕ほどじゃないとしてもやっぱり人に慕われて嬉しくないわけがないし。


よくめんどくさいわ、なんて言ってるけど実はこっそり嬉しそうにはにかんでいるの見たことあるし。

(確かその時何か言おうとしたけど、そのはみかみが可愛いすぎて結局何も言えなかったんだ。)




だからね?
うん、わかるんだ。わかるんだよ。

ハーマイオニーに好意を向ける男子たちの気持ちも、ハーマイオニーの気持ちも。

でもね、




「気に食わないなぁ…」
「そう言うだろうと思ったよ。」

ハリーが半ば呆れ顔で言う。
だってこれほんとに毎回の事だから。


男子たちがハーマイオニーを可愛いって噂してたり、ハーマイオニーの事を誰かが呼び出したり。

そういうの知ったり聞いたりすると僕途端に機嫌悪くなるんだよね。


たまに僕らが一緒にいる時に割って入ったり立ち塞がったりしてハーマイオニーにプレゼントや告白してくる奴もいるんけど、
彼氏である僕の前で僕のハーマイオニーに手出すとか、ほんといい度胸してるよ。

まぁ、その場合は不機嫌マックスになった僕が追い払えばいいだけの話しだけどね。

多少荒々しくなるけど、残念ながら抑えらんないんだよこれだけは。



あーなんか更にイライラしてきた…

そんな僕の名前をいきなり呼んだのは、紛れもない聞き慣れたあの声で。


「ロン、ハリー!」

ハーマイオニーが少し髪をぼさぼさにしながら僕らへと駆け寄ってきた。


「遅れてごめんなさいっ」
「大丈夫だよ、それよりイケメンくんからの告白はどうだったんだい?」

僕がそう聞くとハーマイオニーは え?っていう顔をした。
それからすぐにハリーを睨みつけると、ハリーはごめんごめんって軽く謝る。

「話したの?」
「いや、初めは話す気なかったんだけど、ロンに気付かれてさ…」
「何?そんなに僕に聞かれたくなかった?」

少し不機嫌気味に言い放つと、ハーマイオニーは慌てて弁解する。

「いや、そういうんじゃなくてね、ロンが耳にすると機嫌悪くなると思ったから…
ロンに嫌な思いさせたくなかったの。」


ごめんなさい、怒ってる?って恐る恐る聞いてくる彼女が可愛くて。
一瞬許しそうになったけど。

「でも隠し事は嫌いだなぁ。
…あ、ハリー。僕ら今からちょっと用事あるから。」

僕はそう言って彼女の手を掴み、強引に連れ出す。
ハリーはわかったわかったとでも言うような目で僕らを見送っていた。


「ちょっと、ロンどこにいくの?」
「お仕置きだよ。」

それを聞いた瞬間、どこにいくのかも今から何をするのかも大体検討がついたらしい彼女はボッと顔を赤くした。


いや、まぁお仕置きって言っても彼女に非はないのはわかってるんだけど、この際だから彼女は僕の物っていうことをちゃんと分からせてあげようかなって思ってね。

ほら、マーキングってやつだよ。マーキング。

それで彼女が自覚してくれたら、彼女に近づく奴らも少なくなるかもしれないし。

何より、その首筋に僕の跡でもつけてやったらきっと彼女に好意を寄せてる奴等には効果抜群だろうからね。


「…覚悟しててね。」





害虫除けをしておこう

それでも寄って来たなら、僕が叩き潰すまでだ。






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