いつもどうりの日、いつもどうりの夜。
男子寮には、様々な菓子を広げて楽しく談笑する男子達の姿があった。
Boy dormitory「それでさ、その時の授業がもう傑作で!ミネルバ先生まじでカンカンだったぜ!」
「まじかよー、俺もそれめちゃくちゃ見たかった!あ、そこのやつ取って。」
「はい、」
「馬鹿、これじゃねえよ。俺が言ってんのは隣のカエルチョコだっつの!」
シェーマスが授業での話を繰り広げ、それを聞きながらずっと菓子を食べていた。
だが数分後、話のネタがつきたのか静かになった。
と、思いきや。
「なぁ、ハーマイオニーって結構人気あるんだってな。」
いきなりの発言、そしてそれに過剰な反応を示した者が約1名。
「な、何だよいきなり!」
そう言うのは燃えるような赤毛とそばかすの顔を持つ少年、ロンだ。
「いや、なんとなく思いだしたんだけど。他の寮の奴に聞いたら前まではそうでも無かったけど、最近になって結構男子に人気あるらしいぜ。」
「まぁ顔は悪くねぇもんなー、あと肌綺麗だし頭いいし。」
「3寮対抗のダンスパーティーじゃクラムと踊ってたしな!」
ダンスパーティー、クラム。
その2つの単語を聞いた瞬間、ロンの菓子を食べる手が止まった。硬直したと言った方がいいかもしれない。
異変に気付いたのはロンの隣にいたハリーだけだった。
「懐かしいなダンスパーティー!
そうそう、あん時のハーマイオニー、いつもと全然違うかったな!」
「一瞬、誰か分かんなかったよ。」
俺も俺も、と楽しそうに談笑を続ける男子達とは正反対に、ロンは電池が切れたおもちゃのように完全に停止してしまっていた。
勿論言葉を発する事も無い。
実は、ロンの中でダンスパーティーとクラムは触れてはならない、禁句ワードなのだ。
クラムと踊るハーマイオニー、不愉快になったダンスパーティー、階段での口論。
これらを思い出すたびにロンはどうしても不機嫌になってしまうのだ。
「あっ、そういえばさ!この前スネイプが――」
そんなロンを気遣い、なんとか話題を変えようとするハリー。
だが生憎ハリーが出した話題は何の面白味もない事だった。
なんせ、スネイプについての話題なのだから。
「…そんでハーマイオニーの話に戻るけどさぁ」
スネイプの話題に飽きて、またハーマイオニーの話題に戻るのも時間の問題で。
所詮は思春期の男子、最近話題の可愛い女子の話題は十分に興味をそそった。
だがその頃にはロンの機嫌は大分良くなっていた、ほぼ元のロンだ。
今では話にも混じっている。
ハリーもほっと安心した。
しかし、ここでネビルが爆弾発言を投下した。
「そう言えばロンは、ハーマイオニーの事が好きなんだよね?」
「……は?」
ロンはまた菓子を食べる手を硬直させ、ついでにその菓子は手を滑って床に落ちた。
「やっぱロン、好きだったのかよ!!」
「え、まじでっ!?俺全然知らなかったんだけど!!」
周りの男子達がわいわいと騒ぐ中、ハリーは硬直したロンを見ながらネビルの天然さ故の爆弾発言に軽く恐怖を感じた。
昔からネビルはこうなのだ、天然と言うか先を読まないと言うか、ふととんでもない事を言いだす。
しかも大体が真実なのだ、…今回もそれは例外では無く。
「な…っ何言ってるんだよ!!べ、別に僕、ハーマイオニーの事なんか好きじゃないから!!!」
だが、そう言うロンの顔は髪に負けないほど真っ赤で、説得力は微塵も感じられなかった。
それどころか顔にはまるで そのとうりです、とでも書かれているかのように分かりやすい。
「まぁまぁ、いい加減素直になれよロン!」
「競争力高いだろーけど頑張れよ!俺ら応援してるからな!」
「だっ…だから違うって!!」
いつもどうりの日、いつもどうりの夜。
だがいつも以上に騒がしい夜だった。