告白





「ごめんなさい、気持ちだけ受け取っておくわ。」

そう言って彼女が申し訳無さげに謝ると、目の前の男は残念そうにうなだれた。


そして、ある人物はその光景をひそかに壁に隠れて見ていた。

(違う、ストーカーとかじゃない、断じて。しかしよかった…断ってくれて。)

そう心の中で呟きながら、また2人に目を戻す。



「まぁそうだろうとは思ってたよ…君は高嶺の花だからね。」
「そんな事無いわよ。」
「君ってうちの寮でもかなり人気あるんだぜ?リリー。」

リリーと呼ばれたその少女は、とても綺麗な深紅の髪と緑の瞳を持つ、まるでお人形のように可愛らしい子だった。
人気があるのも頷ける。


そのリリーと会話するのは、高身長でなかなかの顔立ちの男。

話の流れでもわかるが、先程この男がリリーに告白をして、そしてフラれたのだ。



「本当にごめんなさい、どうか私より素敵な人を見つけて。」
「…君は本当に優しいな、それじゃ。」

男はその場を去った。

そして、そのあと残されたリリーはその場に残り、静かに口を開いた。




「…セブ、いるんでしょ?」
「!!!」


リリーの問いかけに反応した、壁の後ろにいる人物は驚いて目を見開いた。
冷や汗がどっと溢れてくる。

リリーは少し怒り気味に壁に近付き、裏を覗き込んだ。


「ほら、やっぱりいた!貴方一体どういうつもり?覗きなんて感心しないわね。」

緑の瞳には、先程まではなかった射るような鋭さがあった。
それに怯えた人物…いや、セブルスは恐る恐る言葉を紡ぐ。


「ご、ごめん!!僕、リリーが告白されてるのを偶然見付けてどうしても気になって…
後をつけたとかじゃないんだ、本当に偶然、たまたまで…!」

リリーは無言でセブルスを見つめる。


「リリー、ごめんなさい。気になったんだ、君が告白を受けるかどうかが…だからお願い、嫌いにならないで…っ!」



すると、リリーは優しく微笑んで言った。


「まったく、馬鹿ね。私がセブを嫌いになるわけないでしょ?」

そう聞いて安心したセブルスはほっと息をつく。

そしてそのあと腰の力が抜けてしまい、ついその場に座り込んでしまった。


「もう、セブったら…でもこれからは覗きなんてしちゃ駄目よ。いい?約束だからね。」
「うん…」

と言いつつも、セブルスはその約束を守れるか少し心配だった。



リリーは先程も言ったが人気がある。
告白だって今までに何度もされているだろうし、きっとこれからもそうだろう。

だからどうしても気になったりしてしまう。
そうすればやっぱりその場を覗きたくなるものだ。


なぜなら、セブルスもリリーを好きなうちの1人なのだから。






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