「神童くん、ずっと前から好きでした。付き合って下さい…!」



そう言うのは、目の前の女子。


放課後に霧野が先生に呼びだされ、霧野を待っている神童を半ば無理矢理に体育館裏へつれて行き、そして冒頭の通り告白をしてきたのだ。

告白を受けたあと、神童は笑顔で答えた。


「ごめん、俺には霧野がいるから。」


神童は、同性の霧野と付き合っている事を隠さずに今まで学校生活を送ってきた。

だから2人が付き合っているのは周りも知っているはずだ、勿論この女子も。


案の定その事を知っていた女子は激しく非難してきた。


「ちょ、ちょっと待ってよ!霧野くんは男だよ!?皆ホモだとか色々言ってるし、大体女の私が男の霧野くんに負けるとかあり得ないし…!
そもそも、なんで神童くんは男の霧野くんなんかと付き合ってるの!?」

すると、女子の言葉を聞いた神童は急に目の色を変えて言った。


「…今、可愛くて性格も良い俺の大好きな霧野を、なんか呼ばわりしたか?君、そんなに俺を怒らせたいの?」

神童の刺すようなその冷たい氷のような視線に女子はヒッ、と小さく声を上げた。


霧野は神童にとって全てなのだ。
そんな霧野を少しでも悪く言うやつは、もはや敵も同然。


「じゃあ俺、そろそろ霧野迎えにいかなきゃなんないから。」

そう言って神童はいつもの表情に戻り、その場を去った。


女子はもう何も言わなかった、
言えなかった。






何だかんだ依存気味




一方、霧野も告白されていた。


「俺、霧野の事が好きなんだ。…よかったら付き合って欲しい。」


霧野は男だ、だが告白してきたのも男。
その見た目から霧野は女子より男子に告白される方が多かった。

しかも告白してきたのは全く知らない奴で、同級生か先輩かもわからない。


「ごめんなさい、気持ちはありがたいですけど、俺には神童がいるんで。」

霧野は慣れたようにそう答えると、男子は悲しそうに顔を伏せて言った。

「…やっぱり、神童と付き合ってるって噂は本当だったようだな。」
「はい。」

「それでも、それでも俺はお前の事が好きなんだ…好きなんだよ!!」

そう言うと同時に男子は霧野に襲いかかり、慌てて抵抗する霧野を押さえつけた。


「ちょっ!何するんですか!!」

無理矢理キスしようとする男子の顔を手で押さえつけ、必死の抵抗。
声を荒げるが辺りには人がいないため無駄な事だった。


「離してくださ、は…離せっ!!」

それでも諦めずに、霧野はじたばたと手足を動かし続ける。




そもそも霧野がなぜ告白されることになったのかと言うと、
先生との用事が終わってやっと帰れると思い、神童が待ってくれていた教室へと向かうが神童がおらず、鞄はあったため学校中を探しているとその途中にこの男子に話しかけられ、そして今に至ったのだ。

なぜこんな状態になってしまったんだ、と霧野は思わざるをえなかった。


「くそ、離せっ!気持ち悪いんだよっ!!」

そう言って持ち前のキックでなんとか相手を蹴飛ばし、霧野は男子が痛そうに唸っている間にその場を後にした。



霧野は神童以外の奴にあんな風に襲われ、肌に触れられた事にとてつもない嫌悪を感じ、体中が気持ち悪くて仕方がなかった。

まるで自分の体が穢れてしまった、そんな感じだ。


「しんど、神童…っ!」

息を切らして無我夢中に走る。
神童にこの体を塗り替えて欲しくて、神童に抱き締めて欲しくて、必死に神童を探す。

するとやっと、体育館付近で神童を見つけた。


「神童!」
「霧野…って、どうしたんだ?!そんなに息を切らして…!」

息を切らしているだけでなく、綺麗に結っていたはずの髪もボサボサで、服も乱れていた。

「何かあったのか、霧野?」
「俺…神童探してる途中に、また男子に告白されて…襲われて…っ」
「…そうか、」


神童は優しく霧野を抱き締めた。

そしてごめんな、守ってやれなくて、と謝った。
霧野は小さく首を降る。


「俺も霧野を待ってる間に女子に告白されて、それからずっと霧野探してた。ごめん、俺がもっと早くお前を見つけていたらこんな目にはあわせなかったのに…」


神童は内心、あの女子に酷く腹が立っていた。

自分達の関係をとやかく言い、霧野をなんか呼ばわりし、挙げ句の果てにこんな目にあわせたのだから。

と言ってもそれはただの逆恨みだな、と自分でも分かってはいるが。



「…ねぇ霧野、ところでその男子ってどんな奴だったんだ?俺が見つけ出してやる。」


とりあえず、今はその男子を始末するのが先決だ。






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