エドガーはイギリスでもそこそこの金持ちで、昔から何一つ不自由することなく過ごしてきた。


欲しい物は親にねだればすぐ手に入ったし、幼いながらに権力をも手にしていた。

専属の家庭教師は教科ごとに何人もおり、それもあってか勉強もサッカーも見事に両立してみせた。


昔から女性と関わる事も多かったため、紳士としての振る舞いも子供の頃からしっかり学んできた。

今では女性をエスコートすることなど、エドガーにとっては容易いことだ。


そしてなによりエドガーの1番の魅力、それは整った顔立ちとスカイブルーの美しい髪だ。

エドガーが生まれもったその容姿は無条件に女性を虜にした。



そのため、エドガーは自分に落とせない女性などいないと自負していたし、自分にとても自信を持っていた。

それなのに、
それなのに。




「惚れた相手1人さえ、おとせないんだな…」
「?? 何か言ったか、エドガー?」

いや、なんでもない。エドガーはそう答える。
それに対してマークは、そうか、とだけ返した。



エドガーはアメリカ代表、ユニコーンのキャプテンであるマークに恋をした。

その美しい顔立ちと綺麗なエメラルドグリーンの瞳、そしてマークの凛々しい内面に惚れたのだ。


それからエドガーはマークに会うたびに何度もアタックし、何度も愛を告白した。

だがマークはエドガーの事を何とも思っていないらしく、いまだにサッカー友達のラインを越えてもらえない。

その事に、エドガーはかなりショックを受けていた。


(こんなにアプローチをかけても効果無しだなんて…性別が違うだけでこんなにも違うのか。)

今まで自分に惚れない女性はいないかったというのに。

経験をいかしたアタックをどれだけしても、本当に惚れてほしいマークだけは無理なのだ。



そもそも、男どうしが恋人などという関係を築くことが果たして可能なのだろうか。

同性での恋など、この世のルールにある意味反している。

このままマークを想っていても、もしマークが振り向いてくれたとしても、そこに待っているのは果たして幸せだろうか。


エドガーは悩む。


(それならいっそ諦めた方が、)

…いいんじゃないか。


エドガーの頭の中で何処からかそんな声が聞こえてきた。

だってそのとうりだ、家庭は裕福だし、それなりに綺麗な女性とそれなりに楽しく過ごせばそれなりに幸せになれるだろう。


一方マークはれっきとした男性、エドガーと同じ同性だ。

同性どうしの恋などどんな結末が待っているかわからないし、不安だらけだ。


やはり、この恋はもう諦めた方が…
そう思いエドガーはマークの顔を覗きこむ。


「ん?、俺の顔に何かついてるか?」

そう言ってマークは、その大きな瞳でエドガーを見返す。


その時エドガーの視界を支配したのは、美しいエメラルドグリーン。
不覚にも胸が高鳴った。


「…いや、なんでもない。」


エドガーはまだ、そのエメラルドグリーンから目をそらせなかった。
だってそれほどに、あまりにも綺麗な色をしていて。



やはりマークを好きになったのは間違いではなかったのだ、と思えた。





エメラルドグリーンをして

(( まだ、諦めないぞ私は。))






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