鈍感、と言えばいいんだろうか。




blunt!






霧野先輩は、サッカーで俺が適当にプレイしていたらすぐに見抜くし、そう言う面ではとても鋭い。

でも、なぜか自分に向けられる感情(特に好意や恋愛感情)にはかなり疎かった。

あんな外見だっていうのに恋愛には慣れてないのか、もともと鈍感なのかなんなのか。理由はわからない。


先輩にアタックしてくる奴は今までに何人もいたが、必ず全員失敗に終わった。

何故かと言うと、先輩がそいつらの気持ちに中々気付かないからだ。

まぁ俺が先輩をガードしているのも理由の1つだけど。


…しかし、恋人である俺としてそれはかなり心配なことである。

只でさえあんな外見だってのに人の好意に鈍感だなんて、もし何かあったらどうするんだ。



「狩屋、なんかさっきから難しそうな顔してるがけど、何か悩み事か?」

マフラーに口元を埋めたまま、先輩がそう聞いてきた。

ええその通りですよ、貴方の鈍感さに悩んでいるんです。
そう言った所で、どうせ先輩は自分のどこが鈍感なのかさえ分からないんだろうけど。


「おい、なんで無視するんだよ。」
「…別に無視してませんよ。」

俺がそう言ったら、先輩は不機嫌そうに眉を寄せてこっちを見た。


「何も返事をしなかったらそれは無視したって事だ。それに今は2人きりなんだし、普段人前で話せないことだって言えるチャンスじゃないか。
お前の悩み、ちゃんと聞いてやるぞ?」

そう、先輩の言う通り今は2人っきりで下校中だ。
でもこれは別に人前で言い辛いとかそういう問題じゃないし。


「…先輩には関係ない事ですよ。」

いやまぁ、ほんとはめちゃくちゃ関係ある事だけど、どうせ先輩に話すだけ無駄だし。

だからそう言ったのに先輩はさらに機嫌を悪くしたらしい。

それからプイッとそっぽを向いて、そうかよ、とだけ溢した。


「拗ねるとか子供かよ。」
「なっ…!!」

ふと呟いた俺の言葉に先輩はすかさず反応して。

てっきり怒るかな、と思ったら意外にも悲しそうに静かに俯いた。



「…そうだな、勝手にお前の私情に首突っ込んだ挙げ句拗ねたりして。まるで子供だな、俺。」


…こう言う時に限ってなんでそう落ち込むんだよ。

先輩の意外な言動に少し戸惑いつつも、落ち込む先輩の顔も可愛いなあなんて不謹慎な事を思ってしまった。


先輩は俺の過去を知ってるから、いつも辛いことを思い出させないようにと家系の事や私情についてはあまり触れてこない。

だからきっと、今回の俺の悩みもそういう系の物なのだろうと勝手に解釈し、その悩みに首を突っ込んでしまったと申し訳無い気持ちになってるんだろう。


ったく、馬鹿だな。
俺の悩みの原因は紛れもない、あんたについてだっていうのに。



「…先輩、俺の悩み聞いてくれます?」
「え!?いや、でも、」
「聞いてくれないんですか?」

俺がそう言うと先輩はおそるおそる、話してみろよ、と言った。


「…俺、霧野先輩が自分に向けられる感情に疎くて鈍感なのが不安なんですよ。」
「、え??」

まさか自分の事とは思いもしなかったであろう先輩は、頭にハテナを浮かべ、きょとんとした顔をした。

ああもう可愛いな。


「自覚ないみたいけど、先輩は自分に向けられる感情に疎いんですよ。

だから、例えば相手が自分に好意を抱いてるのを知らずにそいつを家に招いてしまって、そんで向こうから無理矢理……なんて事ももしかしたらあり得るじゃ無いですか!

それが不安で心配だって言ってるんです。」


そう、先輩ならそんな事も起こりかねない。
それがどれだけ俺を不安にさせるか、きっと知る余地もないだろうけど。


「えっと…なんかよく分かんないけど、お前の悩みって俺についてだったんだな。てっきり私情かと思ったよ。」

よく分かんないのかよ、と心の中でつっこむ。
これだから先輩はたちが悪い。



「とりあえず、これから気を付けるよ。だからもう狩屋が悩む必要はないぜ?」


そう優しく微笑まれても先輩の鈍感さにはちっとも安心出来ないし、むしろ更に不安になってきたけど、

とりあえず可愛かったからキスしておいた。






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