Honest feelings今、僕の目に映るのは。
ホグワーツが崩壊し、悲鳴や爆発音が響く何とも恐ろしい光景。
以前の、ダンブルドアが居た頃のホグワーツではあり得ない光景。
いつ自分が死んでもおかしく無いようなこの状況の中、僕が心配するのは自分の事じゃなくて、愛しい君の事だった。
「ルーナ…ルーナっ!」
必死に君の名を呼び、城中を探し回る。
頼む。どうか、どうか無事でいてくれ。
そう祈っていると、いきなり敵が襲い掛かってきた。
慌てて呪文を唱え、なんとか魔法で吹っ飛ばす。
「悪いけど、僕はこんな所で時間を潰してる場合じゃないんだ。」
早くルーナを見つけて、そして伝えるんだ。
僕の、正直で素直なこの気持ちを。
人混みを掻き分けていると、ハーマイオニーとロンを見つけた。
よかった、2人共生きてたんだ。
「ハーマイオニー!ロン!」
「ネビル!?ネビルじゃない!」
「よかった、生きてたんだねネビル!」
2人はそう言ってくれた。
ハーマイオニーなんか目に涙まで浮かべている。
「僕も君達が無事で嬉しいよ。…あ、あのさ、ルーナを知らない?」
「ルーナ?知らないけど…なんで?」
「…好きなんだ!この戦いで皆死んじゃうかもしれない、だからその前にちゃんと気持ちを伝えなきゃ!」
僕の言葉に驚く2人に、それじゃあ、と別れを告げて僕は走り出した。
人混みから脱出すると、そこにはさっきの人混みからは考えられない程だだっ広く、静かな廊下があった。
少し前まではこの廊下で皆と雑談しながら楽しく歩いていたのに。
どうしてこんなことになってしまったんだろう。
…って、こんな感傷に浸ってる場合じゃないだろ僕!
「ネビル?」
すると、突然背後から聞こえた声。
間違いない…ずっと探していた愛しい君の声だ。
案の定、振り向くとそこにはルーナが居た。
「ルーナ……っ!」
「よかった、ネビル無事みたいだね。」
でも怪我してる、大丈夫?と君は僕を心配してくれた。
僕とは対照的に君は無傷で顔色も良くて思っていた以上に無事だった。
その事に、君が生きていた事に涙を流しそうになるけど頑張ってこらえる。
「…ルーナ、僕、君に言いたい事があるんだ。」
「なぁに?」
首をかしげて聞いてくる君。
耳をつんざくようなこの騒音の中、僕は掻き消されそうな声で、でも精一杯の勇気を振り絞って、言った。
「君の事が、好きなんだ。
…愛してる。」
それはもう小さな小さな声で。
声は小さいわシチュエーションは最悪だわで我ながら最悪な告白だと思った。
そもそも、ハリーや皆が必死に戦ってるこんな時に告白するだなんて、自分でもどうかしてると思う。
でも、こんな時だからこそ、今だからこそ伝えなきゃいけないんだ。
僕は今まで散々自分の気持ちをはぐらかしてきた、自分の気持ちに嘘をついてきた。
けど今日でもうそれとはさよならだ。自分の気持ちに正直に、素直になるんだ。
「ネビルーー」
君が僕の名を呼んだ瞬間、またいきなり敵が襲い掛かって来た。
すぐに杖を構えて魔法を唱える、僕と同じタイミングでルーナも魔法を唱えた。
僕達の魔法は見事敵に的中し、敵を倒した。
でも2人分の魔法というのはかなり威力が大きくて、勢いよく爆発した。
僕の体は吹っ飛ばされ、壁におもいっきりぶつかった。
背骨が折れたんじゃないかという程の痛みの中、僕はある事に気づく。
「……ルーナ?ルーナっ!?」
ついさっきまで目の前に居たルーナが居ない。
それどころか、遠くまで見渡しても居ない。
もしかして、僕と同じ様に吹っ飛ばされたんだろうか。
でもルーナの方が僕より体が小さいし軽いから、僕よりも吹っ飛ばされたかもしれない。
遠く遠く吹っ飛ばされて、もし打ち所が悪かったら、そしたら―――――…
そこまで考えると、脳内に最悪な光景が浮かんだ。
僕は頭をブンブン降って、その光景をなんとか振り払う。
そして、背中の痛みをこらえながらまたルーナを探し始めた。
今度は早く見つかった。
前方に見えるブロンドの長い髪、間違いない、ルーナだ。
服は汚れているものの平気そうで安心した。
ルーナの元へ駆け寄ろうとしたけど、今までずっと走り回っていたから足がかなり疲れていて、鉛の様に重かった。
かろうじて歩く事はできるけど、駆け寄るのは辛い。
だから僕はルーナの名を大きな声で呼ぼうとしたけど、口から出たのは滑稽なほど掠れた声で。
ずっと大きな声でルーナの名を呼んでいたからか、もう喉ががらがらだった。
「ル…ナ、ルーナ…!」
それでも頑張って君の名を紡ぐ。
でもルーナは気付いてくれない。
僕とルーナの間には結構な距離があって、今にもルーナを見失ってしまいそうだ。
だから大きな声を出さないといけないのに、それなのにこの喉はそれを許してくれない。
「…ル…ナっ、」
ルーナは僕とは逆の方向に歩みだそうとしているようだった。
それを引き止めるため、精一杯声を振り絞りまた名を呼ぶ。
「ルーナ…!」
すると、奇跡的に声が聞こえたのか、ルーナはくるりとこっちを向いた。
長い距離越しに、僕とルーナの目が合った。
ルーナは僕に気付いてくれたようで、走って僕の方へ駆け寄ってきてくれた。
僕も重たい足を引きずってルーナの元へと歩みを進める。
「ネビルっ!」
ルーナは勢いよく僕に抱きついてきた。
突然の衝撃に、よろけて倒れそうになったけどなんとか踏みとどまる。
そして、僕を強く抱き締めるルーナの背中にそっと腕を回した。
ああ、まさかこんな風にルーナに抱き締められる日がくるなんて。
多分、今の僕の顔は真っ赤だろう…
「…ネビル、あのね、」
「うん、」
「さっきしてくれた告白の事なんだけど、今ここで返事するよ。」
「!!」
返事、返事なんて考えてなかった。
ただ、自分の正直な気持ちを伝える事しか頭になかったから。
それにルーナは僕の事なんて友達としか思ってないはず、所詮は叶わぬ恋のはず…
「私も…ネビルの事好きだよ。」
一瞬、時が止まったかと思った。
「だから告白された時はすごい嬉しかった。変わり者の私を好きになってくれて、ありがと。」
「……え?」
「でもネビルも変わり者だよね、私の事好きになるなんて。でもそんなネビルが好きだよ。」
つらつらと喋るルーナ。
ちょっとまって、今、ルーナが、僕の事好きって言った?
「…それって、りょ、両想いって事?」
するとルーナはそうだね、って優しく笑った。
そんな、こんな幸せな事が、
「…だから、この戦い必ず生き残ろうね。
だってせっかく想いが通じた合ったのに死んじゃうなんてあんまりだよ。ね、そう思わない?」
僕は絶対に死なないと、そしてルーナを絶対に守ってみせると固く決意した。