「はいざまぁー、お前の負けだぜ速水!」
「もうやだ…」



とりあえずここで皆さんに状況を説明しよう。

今日は日曜日、部活も無いので速水の家に倉間が訪問し、2人でババ抜きをしていた。

そして結果、倉間の勝利となった。
倉間が勝ち誇っているのはその為である。


「しっかしお前、ババ抜き弱いな。身長は無駄に高いくせに。」
「だって始めからやる気無かったですし…あと身長は関係ないですよ。」

速水はババ抜きの勝敗などどうでもいいと言うようにトランプを机に置いて、愛用のヘッドフォンへと手を伸ばした。

「ちょ、速水ちゃんまた曲聞くのかよ?こっち暇だって。」
「その呼び方やめてください。っていうか倉間くんが呼んでもないのにいきなり俺ん家上がり込んだからでしょ、暇なら帰って。」
「つめてー」

倉間は子供の様に頬を膨らませたが、速水はそんな倉間を気にせず曲を聞いていた。



「…ヘッドフォン没収!」
「わっ!!」

すると突然、倉間が勢いよく速水がかけていたヘッドフォンを取り上げた。

速水は驚き、円い白ブチ眼鏡の奥にある瞳を大きく見開いた。


「ちょっと…返してくださいよ。」

倉間からヘッドフォンを取り返そうと、手を伸ばす速水。

しかし、倉間はヘッドフォンを持っている方とは違う手で素早く速水の眼鏡を外した。

「はいこれも没収!」
「くっ、倉間くん!!俺、眼鏡が無いとほんと全然見えないから!返してっ」

さっきよりも慌てて速水は手をジタバタさせる。
だが倉間が素早く避けるので、速水の手が倉間を捕らえる事は無い。

倉間は没収したヘッドフォンと眼鏡を机に置いて、速水の頬にそっと触れた。

「さっきのババ抜き、俺が買ったんだから負けたお前は俺の言うこと聞けよ。」
「はっ?なにそれ、そんな賭けしてないじゃないですか…」


倉間は頬に置いてあった手を高い位置でくくられているツインテールに移動させた。

そしてゴムを半ば乱暴にほどくと、速水の髪が重力に従って落ちた。

「お前、普段くくってるから分かんねえけど結構髪長いんだな…なんか、女みたいで可愛い。」
「なっ!!」

最後の言葉に速水は顔を赤くし、それを倉間はからかうように笑った。

「お前顔真っ赤!」
「っ、うるさいっ…それにそういうのは霧野くんとかの方が当てはまってますよ…」
「確かにあいつ女顔だけど、それ言ったら殺されるだろ。」

けらけらと笑いながら言った倉間だが、確かに霧野は女顔と言われるのを嫌がっているので本当に殺されかねない。


速水はまだ赤いまま言った。

「とにかくヘッドフォンと眼鏡とゴム返してくださいよぉ…」
「駄目。これは命令だ、お前今日1日中そのままでいろ。」
「えぇ!?」

倉間の命令に、速水は眉を八の字に下げた。
瞳は動揺で揺らいでいる。


「お前は俺に負けたんだ。だから言うこと聞けよ。」

と言う倉間の言葉に速水は1つため息を吐いて、だからババ抜きの時そんな掛けしてなかったじゃん…と呟いた。

そして、倉間から没収されたものを返して貰うのは無理だと判断した。

大人しく命令を受け入れると分かった倉間が嬉しそうに笑うと、速水はまたため息を吐いた。




イメージチェンジ

(可愛いなんて言われたら、逆らえないじゃないですか…)






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