小説 | ナノ










実は苦手な奴がいる。

「パウリーさん…何か用ですか?」
「いや、書類大変だろ。手伝ってやろうかと…」
「あぁ、結構ですよ。別に私一人で出来ますから。」
「一人ってそれ…何人分の仕事だと………」
「仕事やらない人にやれって言ってやらせるまでの方が大変ですから…もうそろそろ借金取りがうろついてくる時間じゃないですか?早く帰った方がいいですよ。」

じゃ、失礼しますとドアをバタンと閉める音がした。
定時で帰る奴らの分の仕事を小さな両手で抱える彼女の後ろ姿は大きく見えた。

「かわいくねー女…」

でもって何故か放って置けないそんな女…









「…なんなんだろ、あの人。」

毎回毎回、大変そうに見える私に「手作おうか」と声をかけてくれる。
毎回毎回断っているのに、毎回毎回…………でも、彼が気にかけてくれる度に風当たりが厳しくなる、仕事の量が増えていく…。
声をかけてくれるのはありがたい、心遣いも…でも、こっちだって気を使うし周りの態度だって悪化するのだからはっきり言って迷惑だ。すごくすごく迷惑だ。
でも……………

「………でも?」

思考が停止したのと同時に、私の足も停止した。
早足で歩いていたのに急に止まった為、ヒラリヒラリと何枚かの紙が足元に着地した。

でもの続き………私は何を言おうとしたんだろう…。

「何やっとるんじゃちび子、ほれ。」
「あぁ、すみません。」
「こういう時はありがとうじゃ。」
「はぁ…」

ニコリと爽やかな笑みでプリントを拾われ、書類の上に重ねられた。
23という若さでガレーラの職長を務める華やかな人、いつもルッチさんやパウリーさんや社長と話している所を見る。

パウリーさん………か。

「…カクさん。」
「ん?なんじゃ?」
「パウリーさんってどんな人ですか?」
「………は?」

きょとんとした顔をされた。
私も同時にきょとんとした。
あれ、なんで私こんな事聞いちゃったんだろ。

「すみません、忘れて下さい。」

じゃ、失礼しますと振り返らずにさっきよりも早く歩いて行った。
いい奴じゃよ、と背中に言われたが返事はしなかった。なんか変だ……………私。









「…………何立ち尽くしておるんじゃ、パウリー。」
「…カクか。」
「ちび子嬢にまたフラレたか。」
「何言ってんだ、大体あんな女……」

あんな女…
くすりとも職場に笑顔を溢すことも、馴れ合う事も、微笑む事も…全然ない。
こっちが声をかけても事務的な言葉で返して、冷たくドアを閉めてしまう。
かわいくない女だ、ちっともかわいくない。
すました野良猫みたいな奴。

「あんな女が気になるんじゃろうが、断られたら強引にでも仕事を取ってしまえばいい。」
「あのな………」
「パウリーがどんな奴かと聞かれたわい。」

のう、悪い奴ではないと思うぞ…なんて言葉をかけられるが、そんなもんは最初っから知っているんだ。
文句も言わずに仕事を片付ける所も、尊敬している。

「そういえば最近徹夜続きじゃのう、ちび子嬢は。今月からずっと。」
「は?今月って…」

今月って何日経ってると思ってんだ…。
そういえば、心なしか顔色が悪かった気もしないでもない。

「だいぶ疲れとるんじゃろうなぁ、目の下に隈が出来とったわい。おい、パウリー。手伝う気があるなら今から行ってやれば…」
「ちょっと行ってくる。」

カクの言葉を遮って早足で彼女が消えた部屋へと向かう、決してあの女が心配な訳じゃない。そうじゃない。…あの強がりの可愛くねーバカ女が倒れた時の方が後々大変になると思ったからだ。
ただ、それだけ。

「おい、ちび子!」

勢い良くドアを開けるとパソコンのマウスに手を置いて書類とにらめっこしているちび子の肩がビクリと震えた。
あまり表情に変化のない彼女にしては珍しく、驚きというか戸惑いというような目で俺を見た。

「どうかしましたか?パウリーさ……あれ?」
「うぉわっ」

パッとちび子立ち上がれば、ぐらりとふらつく身体。キャスター付きのイスにもたれようとするが後方にころころと転がって行ってしまい、反射的に俺が彼女を受け止めた。

「あ…すみません。」
「いや…お前無理し過ぎなんだよ、アイツ等の分の仕事までやる必要ねぇだろ。」
「困るのは…アイスバーグさんですし。」

初めてコイツの目をちゃんと見た気がする。
まっすぐとした彼女の目。なんだ、改めてちゃんと見てみればこの強がり女も普通の女なのか…。
カッチリと合った視線、何故か身体が動かなくて、酒を飲んだ時のように内側から熱がほてっていって…

「あの…はなして下さい。」
「わ…わりぃ。」

チークの赤みとはまた違う赤さを持った彼女と走ってきたせいではない赤みをもった俺の頬。
しばし固まる俺とこの女。

後でアイスバーグさんにこの話をしてみた、アイスバーグさんは豪快に笑ってこう言った。





それはきっと…

ンマー、恋の予感ってやつだ。





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キリリクして頂いたウルフちゃんに送らせて頂きます^^
パウリーが追いかけて…………ますかね、なんか私の想像力ではこの展開止まりですみません^^;

二人がうまくいけばいいな、と思って終わらせて頂きました。
ていうか…あれ?今思ったんだけど、甘さってあるか?←
ツンデレのツンの部分はかろうじてあるっはずっ

ぜんっぜん返品可能ですし、書き直せって言って頂ければ全然書き直しますのて^^;

ではではリクエストありがとうございましたっ
これからも仲良くしてやって下さい^^

ではでは、読んで下さってありがとうございました!
(4000)










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