バタバタと慌ててベランダに向かって、焦る気持ちでなかなか開かない鍵を開けた。
いい勢いを付けてしまっていた為、割と大きな音を立ててその扉を開き、転がるようにベランダに出た。
見る方向は、一直線。
その先には、驚いたようにこちらを見ているマルコ部長。
それでも私と目が合うと、僅かに緩めてくれる表情。
煙草の光がまるで蛍のように揺れていた。
今日はすごく晴れていて、月の光で煙草の煙までよく見えている。
知らせてくれたのが嬉しくて、ずっと見つめてしまった。
ほんの5分程の僅かな時間だけど。
そういえば今日はずっと、隣に並んでいることが多くて、顔をちゃんと真正面から見たのは数えるくらいしかなかったな。
やがて手元で火を消すのが見える。
中へ入る直前に、片手を顔の高さまで持ち上げてゆるりと振ってくれている。
だから私は、大きく右手を上げて、大きく左右にそれを振ったんだ。
私を見たマルコ部長が、また小さく笑う。


「おやすみ」


【One sided relationship 2】より





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