ぐいっと腰に回せた腕に力が込められた。
マルコさんの腕に促されるまま、道の端へと移動させられていく。
な、なに…? その速度についていけないまま、疑問符も脳裏に浮かんだまま。
マルコさんの身体に隠されるように抱えられて、横でバっと大きく扇子が開いたのが見えたと思えば。
奪うように強めに、唇にマルコさんのそれが触れた。
触れるだけですぐに離れていくと、間近で目が合う。
唇の端を持ち上げてニヤリと笑うマルコさん。
ああ…本当に、お見通しだ。
もう一度して欲しくて目を閉じると、願い通りにマルコさんの唇が角度を変えて触れる。
扇子に隠れてキスなんて、しばらく忘れられそうにない。
お揃いの扇子を見るたびに思い出しそうだった。



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扇子でキス | ナノ
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