衝動

Side:☆☆☆



「おーい、誰かそれこっちに持ってきてくれェ!」
「その釘曲がってんぞ!」


怒号にも似た大きな声と、木を打ち付ける大きな音。
それに切った雲を運ぶ台車の転がる音。
かつてエンジェル島があった場所の近くから、シャンデイアの村があったところまでを居住区として、切り開いていっている。
深い森の中心部にあるここは、最近になってようやく開発が進んで開けてきた大地。
開発といっても無駄に木を切り倒したりはしない。
それを利用して住めるように建てたり、間借りしたり。
その方法は、かつて雲隠れの里に伝わっていたものを私たちが教えて貰っている。
自然を壊さず、共存できるようにとの技法。
その代わりエンジェル島に居た私達が教えたのは、主に雲を使う手法で。
切ったり、加工したりは得意な人がたくさんいるから、お互いの出来ることを使って住める島にしていっている、まさに最中。
麦わらの一味が空を降りて行ってからも、良好な関係を築けている私達。
それは今でもずっと、変わりなくて。
むしろ、隣人がシャンディアの子孫の人という家も、もう珍しくはない。
私だって。
今はラキと仲良くなって、ルームシェアをしている。
住むところは、まだまだ足りないくらいだから。
湿った雲が運んできた雨が上がった後は、大地も割と嫌な臭いがするもんなんだなって意外に思ったのはもうずいぶん前の話で。
ここ最近は、踏みしめる大地の感触が当たり前になってきている。
エンジェル島に住んでいた頃には、考えられなかったこと。
ヴァースが臭いなんて、そんな罰が当たりそうなこと言えなかった。
でも今は。

そんな、作業員達が働いて住宅街を作ってくれているところに、私はやってきた。
私の日課。
それに、仕事でもある。
陸の上でも走れるように作ってあるボードの後ろに取り付けた荷台には食べ物がたくさん入れてある。
働いている人たちの為のお昼ご飯。
昼時にはいくつも並ぶ屋台のうちのひとつを、任されているんだ。
メニューはバーガー数種類なんだけど。
実はこれは、麦わらの一味のサンジさんに教わったソースを使っている。
最初の頃は、自分の為、それから近くにいた人の為に、教えて貰ったそれで作っていたものだったんだけど。
いつの間にかたくさんの人に人気が出て、お店にしてほしいとの要望が出てきたから。
今はラキ達のお店の厨房を借りて、この作業場で出しているだけだけど、いつか自分のお店が持てたらいいなって。
そんな小さな夢も叶えられるかもしれない現実に、毎日がわくわくしていた。

隣には、ラキとコニスの店の出張屋台も並ぶ。
皆が休憩に入るころには、いろいろな美味しそうな匂いが他の屋台からもして、毎日人もたくさん来てすごく活気づいている。
そこでも、もうシャンディアと空の者、とお互い呼び合ってたのが嘘みたいに、種族が入り交じって皆一緒に来てくれるのを見るのが、楽しい。

お肉に火を入れて、最初のお客さん達の分の個数を確保した頃、ちらほらと作業達がやってくるのが見えた。
さっき、昼を合図する鐘の音が聞こえてきたから、ここが賑わってくるのも時間の問題だろう。
そして。
いつも真っ先に買いに来てくれるのは、神の護衛隊のワイパーさん達。
神の護衛よりもこっちが先、と優先して手伝いに来てくれているみたい。
今はまだ、皆生きることに必死で、悪いことをする人なんてほとんどいないからね。
はっきり言ってものすごい助っ人だと思う。
だって力も強いし、動きも的確、それに、今まで私達の知っていた姿、それ以上に優しいんだ。
物の言い方はすごくきつい時もあるけど、訊けば絶対に教えてくれるし、困っていたら助けてくれる。
私も何度も、荷物を運ぶのを手伝って貰った。


「☆☆☆、これ3つよろしく……おい、ワイパー!お前もバーガー食う?」
「ん、…ああ、頼む」
「ごめんやっぱり4つ。飲み物は隣で買うからさ」
「はい、ありがとうございます」


屋台を少しだけ屈むようにして覗き込んだのは、カマキリさん。
隣、とはラキ達の店のことで、親指で示した先では、同じくラキが親指を立てて待っている。
少し離れたところにワイパーさんがいて、何か紙面を広げて数人と会話をしているから、まだまだ仕事は終わってはいないみたい。
先に準備していた分から、4つ包んだそれを渡してお金を受け取る。
カマキリさんは、サンキュと小さくお礼を言いながら隣の屋台へと移動していった。
あの人の目を、私は見たことがない。
初めて会った時から現在まで、必ずゴーグルをつけているから。
眠るときはきっと外すんだろうけど。
それでも、ゴーグルから出ている部分は端正な顔立ちをしているから、きっとかっこいいんだろうとは思う。
ちょっと見てみたいな、なんて会うたびに思うけど、それをお願い出来る程にはまだ親しくはなかった。



**********



今日は30分で完売した。
ありがたいことに。
荷物を片付けて、屋台を畳んだら帰ってしまってもいいんだけど。
むしろ、早く帰って明日の仕込みを先に済ませてしまった方がらくなんだけど。
なんとなく毎回、1時間の休憩中はその場で食べている皆を見るのも、日課になっている。
だって嬉しくて。
皆ほっぺたが膨らむ程に頬張って美味しそうに食べてくれているから。
その姿を見るのが、大好きだから。

一通り皆が食べ終わって、そろそろ休憩時間も終わり。
作業場に帰っていく人たちの背中を見送る頃、私も荷造りを終えて岐路に着くことにした。
隣を見ると、まだ帰り支度は全くしていない様子の二人。


「今日は晩御飯、☆☆☆の番だったよね?」
「うん、今日は空魚を焼くよ」
「やった!あんたのご飯の方が、美味しいからね」
「じゃあ先に帰って明日の仕込みと、晩御飯作っとくね」
「ん。今日は気温も高いし、あたしらもうちょっと飲み物売ってから帰るよ」


そう言ってラキが私に投げて寄こしたのはお店の鍵。
速い移動で失くすことのないように、それをしっかり仕舞って。
二人に手を振り、他の屋台の人たちにも軽く会釈をしてから、ボードのダイアルのスイッチを入れて。
いつも通り、岐路に着く。
ハズだった。
前へ進もうとしたのは私だけで、爆発音と共に何かに引っかかったみたいにボードがその場で止まり、そして宙を舞った。
私の身体ごと。
変な方角に持ち上がったから、バランスを崩してその場で弧を描くように半周したボード。
そして重力に負けて、一気に背中から地面にたたきつけられた。
地面でも激しい音を立てて荷台の籠がひっくり返っている。
その間も暴走したボードは私の身体を地面に擦り付けながら移動し、5メートル程離れたところで何か強い力に腕を捕まれた。
ほどなくして、足元のボードの暴走もようやく停止した。
地面を引き摺られた私は土で汚れ、小石に何度も当たって小さな擦り傷がたくさん出来ている。
痛い。
それに、土が口にも入った。
さっき支度をした荷物は盛大に散乱している。
お金の入った箱だけが、蓋が開かなかったのが唯一の救いなくらいで。
なにより、皆がこちらを注目していて、恥ずかしい…。


「何やってんだお前…立てんのか?」
「…え?………は、はい……?」


ただ茫然とその場の光景を見ていると、間近で聞き慣れない声。
見上げると、私の腕を掴んでいるワイパーさん。
さっき感じた強い力は、ワイパーさんのものだった。
思いっきり呆れた表情をしているけれど。
助けてくれた…?
止めてくれた腕を、今度は持ち上げるように引っ張られ、その勢いで立ち上がろうとすると、足首がひどく痛む。
でもそんなんで、泣き言なんか言ってられないから。
この人を、こんなところで足止めするわけにはいかないから。
痛い箇所を庇うようにして、なんとか誤魔化しながらゆっくりと立ち上がる。
それを見たワイパーさんは、手を離してくれたけど。
次の瞬間、ワイパーさんの両手が私の腰に触れて、地面から浮く程に持ち上げられた。
痛みよりも、驚きの方が勝って、声にならない言葉を発してしまった。
え?
なに?
状況がまったくつかめないまま、軽いパニックで。
じたばたすると、余計に重さを与えてしまうから、なんとか暴れることだけは我慢できたけど。
足についているボードも引きずられるようにして、私についてくる。
痛い。
これは、足首も完全に痛んでるな。
痛みに耐えながら移動した先は、屋台の横に置いてあった椅子の上。
驚いたラキとコニスが駆け寄ってきて、私の様子を見て、土埃を払ってくれている。


「ちょっとワイパー、女の子持ち上げるなんて…」
「すみません、大丈夫。ほんと…迷惑かけちゃって、…ごめん…ッ」
「うるせェ、怪我人に女も何もあるか」
「そりゃそうだけど。☆☆☆、今ボード取ってあげるからね」


ラキがボードを取ってくれている間、コニスは散らばった私の荷物を集めてくれていて。
その上、作業場に駐在しているお医者さんまで呼びに行ってくれた。
二人には、迷惑をかけてしまっていた。
きちんと確認しなかったからだ。
多分、荷台とボードの連結部分がちゃんとつながってなかったんだ。
金具が劣化していたか、外れていたか、壊れていたか…。
その間、ワイパーさんは近くで腕組みをして、私をずっと見ているし。
きっと呆れているんだろう。


「二人とも、ゴメンね。それにワイパーさんも、ありがとうございます」
「いーよ、それより、こっち痛い?…こっちは?」


ラキが確認してくれた足首は、痛いのはどうやら左足の方だけで済んでいるみたいだった。
それは、コニスが呼んできてくれたお医者さんが診てくれて、診察後の判断も同じで。
足首を中心に包帯を巻かれた状態で落ち着く。
ひねっただけ。
捻挫だろう、ということで。
一週間も休めば休めば、屋台への仕事復帰も可能。
そういう話になると、ラキもコニスもほっとした表情をしてくれていた。
ボードさえ壊れてなきゃ、バランスを取りながらでもなんとか帰れる。
そう思って椅子から降りようとすると、またワイパーさんに腕を掴まれ肩を押され、制止させられる。


「バカヤロウ、悪化させる気か」
「そうだよ、安静にしてな」
「うん、してる…してるけど、まずは家まで帰らなきゃ…」

「そんなの、ワイパーが送るよ」
「最初からそのつもりだ。さっさと準備しろ」

「…え?」



**********



背に自分の乗ってきたボードを背負い、片足を、普段は大きなバズーカを支えているホルダーか何かなんだろうなという留め具に引っかけている。
そして両手はワイパーさんの肩に捕まった状態で、岐路を移動している。
申し訳ないことに、荷物の袋は持って頂いてしまっている。
最初は抱きかかえた状態で、と言われたんだけど、想像するだけでとてもじゃないけど、平常心でいられると思えなくて必死に抵抗しての、この格好。
長い髪を指でひっかけないように、最善の注意を払いながら。
それでも時々、バランスを崩しかけて上半身をワイパーさんにぶつけてしまい、慌てて身体を起こすということも何度かあった。
これは…。
緊張する。
自分で背中に捕まると選択をした為、落ちるわけにはいかない。
絶対に。
いつもよりもゆっくり走行してくれているんだということは、よくわかる。
それに足に響かないようになのか、大きな木の上は通らないようにしてくれているみたい。
でも私の体幹が鈍いのか、時々やっぱりぶつかってしまうから、慌ててしまう。
広い背中。
それに筋肉質の、硬い身体。
こんなに逞しい体の人に触ったことなんかなくて、緊張する。
ドキドキと、高鳴る鼓動が止められなくて、益々焦ってしまう。
そして何度目か、身体がワイパーさんに当たって、慌てて起こして離すと、その場でゆっくりとワイパーさんのシューターが止まった。
まだ深い森の途中、お昼を過ぎた頃だけど木々に遮られて辺りは薄暗い。
住宅街も、もう少し先のハズ。


「おい羽、挟まってる」
「は…羽…わっ……すみません!」
「くすぐってェんだよ」


間近で振り返る横顔は、鋭い目をしているのが見えて。
でも耳だけはちょっと赤くなっているのが意外で、印象深かった。
そして自分の手元を見ると、肩と共に背の羽を巻き込んで掴んでしまっている。
慌ててそれを離すと、ぐらりと後方へとバランスを崩して仰け反った。
ボードの重みと、もともと重心だってきちんと取れていないのがきっかけになって、上半身が後方へと倒れていく。
落ちる…!
さすがに覚悟して目を閉ざして衝撃に備えた。
さっき落ちたんだ、二度目だって同じこと。
背中に痛みが走ると思ったのに、私の身体に起きたことと言えば、腕を捕まれ、そして引かれたのみで。
ぐいっと強めに引かれた腕は、ワイパーさんの首に巻き付かせられて。
これだと。
この体勢だと。
ぴったりと上半身をワイパーさんに密着する形になる。
筋肉質な身体の感じも。
布越しからでもはっきりと分かる体温も。
全てがリアルに私の身体に響いて。


「え?…う、そ…待っ…」
「それ離して落ちたら、知らねェからな!」


知らないということは、ここに置いていくということだろうか。
ここに…。
周りは木や草が生い茂っている森の中。
未開発のこの土地で、遠くからは獣の鳴き声も聞こえるこの場所に。
思わずぎゅっと両手でしがみつくと、腕の中のワイパーさんがひとつ小さく頷いたのが見えた。
そしてまた、ゆっくりとした動きでシューターが発進していくと…。
さっきよりも、ずっと速度を落として走ってくれている…?
横を流れる景色が、さっきとはまるで違う。
木のひとつひとつを確認できる程に、速度を落として飛行してくれているようだった。
さっきだって遅かったはずなのに。
かつて鬼だとまで言われて、確かに私も暴れているのを何度も見かけたことはある。
実際、怖い人なんだろうと思っていたから。
ラキと仲良くなって、カマキリさんやブラハムさん、ゲンボウさんと会話することも増えた。
だけどワイパーさんだけは、近寄りがたかったというか、纏う雰囲気が刺々しくて話しかけることさえ苦手としていたのに。
本当は、こんなに優しい人だったんだ。
転んだ時に助けてくれたことや、こうして送ってくれていること。
怒りながらも、実はすごく優しくて。
かっこいい…。
ホワンと胸の中があったかくなった気がして、自然に頬がゆるんだ。
自分でも気が付かないうちに、ワイパーさんに抱き着いている腕に力が入る。
足は痛いハズなのに、もうその痛みすら消えていくようで。
これって、もしかして……。
そんな甘い気持ちに浸っていた時、背負っているボードから何か小さな音が聞こえてきた。
なんだろう?
そう思っても、この状況じゃ確認するのは難しい。
どうしよう。
それでも何となく、後ろを振り返った時に、突然の爆発音と共に、本日二度目に背後から吹き上げられる感覚を得た。


ドォン!!
「…!?」
「ああああぁぁぁぁああ!」


可愛い悲鳴なんて上げられなかった。
背後ではボードについているダイアルが暴発して、激しい爆発音を立てている。
それは大きく風を纏い、ワイパーさんを巻き込みながら私の身体を上空へと運び。
それまで飛んでいた高さよりも舞い上がってから、再度ダイアルの暴発が止んで、再び落下の一途を辿って…。
驚いたワイパーさんがシューターを止めてくれなければ、もっと参事になっていただろう。
息を止めて、衝撃に備える。
今度こそ、二人同時に地面に叩きつけられて…。
と思ったけど、痛みは感じなかった。
確実に、堕ちた感覚はあるのに。
目を開けると、手元には人の肉体の感覚。
さっきまで、触っていたそれで…。
ああ、もう、押し倒したみたいな恰好になってしまっている。
完全に肉の防御だ。


「す、みません…!」
「イッテェ…!!」
「大丈夫ですか?」
「お前な……ダイアルのスイッチは切っとけ!」
「本当に、すみません!!」


あれから大人しくなっていたから、てっきり壊れたんだとばっかり思っていた。
まさか暴発するなんて。
間近で大声で怒鳴られるなんて初めてで。
さすがにビクっと肩を竦めてしまう。
でもそれ以上、ワイパーさんは怒鳴ることはなくて。
私を上に乗せたまま上半身を起こして、未だ背にあるボードのスイッチを切っているようだった。
近い。
近い、近い。
その距離にもドキドキしたけれど。
間近で見る、本当にまじまじと見たその顔は、思った以上に。
いや、すごく端正な顔立ちをしていて。
前から向き合うとよくわかる、微かに香るたばこの匂い。
私とは違う、癖のない髪型も。
肌にくっきりと刻まれている刺青も。
全てが、ドキドキした。
ぼんやりと見つめる私を、ワイパーさんは呆然としているように見えたのか、そのまま持ち上げて地面に下ろした。
その動きを、ただ不思議な気持ちで目で追うことしか出来ない私。
溜息を付きながら立ち上がる姿さえ、目で追ってしまっていた。


「足は、痛くねェのか?」
「足、…あし?」
「だから今ので、余計捻ったり悪化したりしなかったのかと訊いてんだよ」
「…はい、今は、だいじょう、ぶ…」
「ならいい」


呆けている私を呆れたように見ながら、横に落ちた荷物を拾って、自らの背にそれを担ぎ。
私の背からもボードを外してしまうと、さっきまで私が足をかけていたホルダーを付けてそれも自分の背へ。
あれ、これって…?
ワイパーさんの背中は荷物で埋まってしまっているし。
また迷惑をかけてしまった。
手を離したわけじゃないけど、落下したことには変わりなくて。
もしかして。
もしかしなくても、置いて行かれる?
え、嘘でしょ?
こんな深い森の中で、ボードもなく置いていかれたら。
ゾっと背筋が凍る思いで、足が痛いのも二の次で、思わず立ち上がった。


「待ってください、すみません…あの、今度はちゃんとしますから!」
「おい、立つな。何言ってんのかわかんねェが」
「置いてかないで…」
「こんなところに置いてくか、バカヤロウ!」


怒ったような表情をした後に、ワイパーさんは私の腰に片手を添えてぐいっと持ち上げてしまう。
抱きかかえられる?
当初の予定通りにそうなるのかと思えば、ワイパーさんの顔を間近に見つめた後に、それはすぐに通り過ぎて。
自分の顔が荷物にまで到達して、むしろ、そこに頬が当たるくらいになる。
これって。
この格好って、もしかして。
肩に担がれてる?


「な、なんで?え?ワイパーさん、ちょっと待って下さい、こんなッ…荷物みたいな持ち方…っ」
「うるせェ!!荷物と一緒で充分だ!!」
「でも、あの…パンツ見えちゃいます!」
「はぁあ!?」


肩に腹ばいになる格好で、ワイパーさんの手は私の腰を支えてくれてはいるけれど。
スカートはずり上がってもう太ももの一番上ギリギリだし。
こんな格好で居住区までいくなんてさすがに。
思わず足をバタつかせて抵抗してしまうと、大きく、盛大なため息を付いたワイパーさんが荷物の一番上にあった大きな布を引っ張りだして腰に掛けてくれた。
その後、お互い一言も交わすことなく結局家まで到着してしまったけれど。
それでも私は見てしまった。
こっそり見た横顔。
その頬が赤く染まっていたことを。
怒ったような表情をずっとしていたけど、頬も赤かった。
なんか、可愛い。
荷物みたいな、ずっと変な持ち方で運ばれてはしまったけれど。
家に着くまで、頭の中はワイパーさんのことでいっぱいで。
ずっと、同じことばかり考えていた。





戻る




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -