Ti adoro7

Side:☆☆☆



『☆☆☆ちゃん、今日店に来れる?オヤジが、会いたいって言ってんだよね』


仕事終わってから気が付いた留守電、サッチさんの声で入っていたものだけど。
正直、もう来ちゃったんだって思った。
もう少しくらい、一緒にいられると思ってた。
もう少しくらい、マルコさんが子供みたいに甘えてくれる姿を見ていられると思っていたのに。
突然会いたいって言われる用件は、わかってるつもり。
誰がどう見たって、マルコさんはお金持ちのご子息だ。
時期社長なのか、何の役職を引き継ぐのかさえ私は知らされていないけど。
そんなスゴイ人が、私のような一般の、それ程目立って取り柄もなく、際立って美人でもない、普通の人間と均衡がとれるはずがない。
一生そばに居てくれって言ってたマルコさんの言葉は、きっと本心だろうと思ってる。
本人の意思と、家柄は別なんてこと、よくわかってるつもりだよ。
こんなドラマみたいなこと、本当にあるんだなんて妙に落ち着いていた。
身支度を整えて、会社を出てからサッチさんに電話をかけた。


「今お仕事終わりました。お店、行けますよ」
『突然でごめんな、ほんと、ありがとう。オヤジはもう待ってるよ』
「今から向かいますね」


短い会話を終えて、スマホをポケットに仕舞うとすっかり行き慣れてしまった道のりを歩きだす。
一歩一歩、マルコさんとのお別れが近づいているような気がして重かった。
だけど、負けるもんか。
泣いてすがるより、マルコさんに愛されたことを誇らしく胸に飾って最後にしよう。
見慣れた路地を曲がってここ最近、通い詰めた道を歩いて行く。
今日も電気は点いていないお店の看板が見えるけど、いつもと違うのは窓から灯りが全く漏れていないということだ。
お店の扉に手をかけると、いつもは店内から聞こえてくる男の人達が騒いでいる声がしない。
さすがに、扉を掴む手が震えた。
このまま帰ってしまいたいと思うくらいには、緊張もしている。
でも、逃げるわけにはいかない。
頑張れ、☆☆☆!
扉を開くと、店内は一応明るくなっていて幾分ホッとした。
室内からは、ぽつりぽつりと会話しているらしき、男の人の低い声が聞こえる。
意を決して中に入ると…。
いつもはイゾウさんが座っている箇所に、大きな男の人が座っていた。
だいぶお年を召しているようにも見えるけど、しゃんとした背筋に、威厳のある体格、そして私に気が付いた時のこちらを見る鋭い目線。
オヤジと呼ばれている人を表す全てのものが、皆が慕っているという事実がわかるくらい、特別な感じがした。


「いらっしゃい、今日は貸し切りだよ」
「お邪魔、します…」
「随分可愛いお嬢さんじゃねェか」
「初めまして、☆☆☆といいます」
「あァ、いいからここ座れ。サッチ、何か酒出してやれ」


はいよ、なんて言いながらサッチさんは口元を緩めただけで私のことは見てはくれなかった。
そのまま厨房の奥へと入っていき、お酒を選ぶ瓶の音だけが聞こえてきている。
そのまま突っ立っているわけにもいかず、示された椅子、オヤジさんの隣の椅子を引いて腰を下ろした。
近くに座ると、空気が違う。
何かされているわけじゃないのに、プレッシャーがすごい。
いつもはリラックスして、お酒を楽しみながら座っている席なのに。
ついこの間は、マルコさんと二人で来て、皆と一緒にお酒を楽しんだ。
他の皆の目を盗んで、こっそりキスをしたのもこの席だったのに。
今はもう遠い昔のことのように思えてくるから、少しさびしい。
思い入れの深い椅子、いつの間にかそこに座ることに馴染んでしまっていた私の体。
今は隣では、私がお店に入ってきた時と変わらない格好でお酒を飲んでいるオヤジさんがいる。
手にあるグラスは普通のグラスのはずなのに、大きな手の中にあるのはショットグラスのようにも見える。
それをがばっと一気に飲み干して、コンッとテーブルの上に乗せた。
さすがに隣にいて、このまま無視することは出来なくて。
飲んでいるらしいお酒の瓶を私が手に取ると、一度離したグラスに手をかけたのが見えた。


「こんなに可愛いお嬢さんに酒注がれるなんて、何年振りだろうなァ」
「嘘つけよ、オヤジいっつも女に囲まれてんじゃねェか」
「可愛いは別モンだ」


お店の奥からワインの瓶を持ってきたサッチさんが、半ば呆れ気味にオヤジさんを眺めている。
当の本人は、悪びれた様子もなく楽し気に大きな声で笑っているのみで。
私が来る前から、だいぶ飲んでいたんだろう。
強いお酒の匂いがしているのに、酔っているようには見えない。
この人は、ずいぶんお歳を召しているだろうとは思うけど、きっといろいろ現役なんだろうと思った。
だってなんか、マルコさんとはまた違った色気がすごい。
厳しい雰囲気の中にもどこか懐かしいような優しい感じがして、それに少しどこか危険な雰囲気もある。
上手く説明できないのがもどかしいけど、この人もすっごくもてるんだろうな〜って漠然と感じるから。
女性が放っておくはずがない、と思う。

そのうち、私の前にもワインが入ったグラスが置かれて、軽く乾杯をしてそれを飲んだ。
なんの乾杯なのか、疑問には思ったけども。
多分私が最初に来た時に出してくれたワインと同じ銘柄なんだろうと思うけど、緊張して味はよくわからなかった。
少しでも気を緩めると、カタカタと指先が震えてしまうから。
それをぐっと力を込めてグラスに押し付けて、なんとか震える身体を抑えつけた。


「長男って決めたわけじゃねェのに、もともと面倒見のいい性格で、いつの間にかそうなっちまってたなァ」

「仕事も、兄弟達はやりてェことがあるだろうが、自分には何もねェから、おれの跡を継ぐなんて言いやがって」

「会社なんざおれの代で潰したって良かったんだが……他の奴らが困るだろ、なんて言われちゃあなァ…」
「それに関しては、おれも料理やりてェって言っちまったから、ほんと、…申し訳ねェのと感謝と、本気で思ってるぜ」


ぽつりぽつりと、独り言のように語るオヤジさん。
主語はないけど、すべてマルコさんのことなんだろうと思う。
それに時々サッチさんが付け足していく感じで、私は時折、相槌を打つことしか出来ない。

確かにオヤジさんの言うようなことは感じたことがあった。
みんなと同じように飲んで騒いでいても、どこかほかの皆さんは、マルコさんにだけは少し違うというか。
差別しているとかじゃなくて、ほんの少しだけ敬意があるようにも見えたから。
最も、それは本当に時々感じるだけの出来事だったけど。
たいていは、いじられていることのほうが多かったようにも思ったし。

それに…会社を潰してもいいと思ったとは言いながらも、口元を緩めて話すオヤジさん。
心の底では、うれしくって仕方がないっていう様子だ。


「素直な奴らじゃねェから、誰も何も言わねェが…頼っちまってんだろうなァ」

「本人も、気負ってるところもあるだろうよ」

「あいつ自身頼れて、全部一緒に背負ってやれる女じゃなけりゃならねェ」


ぐいっと再びグラスの中のお酒を一気に飲み干してしまったから、再びお酒をグラスに注ぐ。
すると、また、表情を緩めてお礼を言われるから、戸惑いが隠せなかった。
どういう風に、とらえたらいいんだろうか。
マルコさんが頼れるような器量のある人じゃないとって言いたいんだろうか。
もしくは、背負ってあげられるほどの家柄や財力が必要。
それは完全に私とはかけ離れた人物像で、わかっていたことだけどもズシンと心の中に響いた。
ただひたすらに、ぼんやりと視界が滲み始めて、隣のオヤジさんにはそれだけは知られたくなくて、必死に隠した。
そのために、強めのワインも多めに飲み込んだし、何度も瞬きも繰り返した。

そのうち、テーブルにサッチさんが作ってくれた料理も並びだした。
オヤジさんはそれも美味しそうに食べつつ、割と機嫌も良さそうにお酒を飲んでいるから、不思議な気持ちでそれを何度か横目で見た。
私からは何か言う言葉も見つからなくて、珍しく黙ってしまっていたと思う。
お酒は飲むけど、食事には手も付けない、口数も少ない私を見て、時々サッチさんが首をかしげている。
だから今、何か声をかけようと何度も思考を巡らせてみたんだけど、どうしても何も思いつかない。
頭に浮かぶのは、マルコさんの顏。
どんな場面でもすぐに、マルコさんの表情を思い出すことができる。
でも一番好きなのは、ここで皆と楽しくお酒を飲みながら、私の隣で笑ってくれている表情だ。
この先、何度見られるのかわからない。
もしかしたらもう、二度と会わないで欲しいと今夜言われる可能性だってあるわけだから、そうしたらもう会えない。
だけどきっと、この胸には刻まれているはずだから。
この店を出るときには、胸を張っていこう。

お酒を飲んでいるオヤジさんに、三杯目を注いだ時に、ふと思い出したかのように小さく笑うのが見えた。
それは軽い空気の振動と、それに気が付いたサッチさんも同じくして笑っているから、気が付いた。
そのうち、くくっと大きめに喉を鳴らしている音が聞こえてくる。
心底楽しそうに、口元が緩んでいた。
私はお酒の瓶をテーブルに乗せて、次の言葉を待つ。


「それにしても、珍しいこともあるもんだなァ」

「昔っからあいつは女には淡白だったが」

「それが突然、女に惚れたなんて言いやがる」
「そーなんだよ、あの日まさかこうなるなんて思ってもみなかったから、…失敗したぜ、ったくよォ」


はぁ、とサッチさんが深いため息をついている。
私とマルコさんがこうなることを、本心では良くは思っていなかったっていうことだろうか。
あんなにいつも笑顔で、歓迎してくれていたのに。
料理の相談だって、親身になって答えてくれているんだと思ってたのに。
なんだかすごく、裏切られたような気がして、さっき我慢した涙が再び目の中に滲んでくる。


『I must leave it to love him.』


初めてのデートの時に、マルコさんと一緒に見た映画の主人公のセリフが頭の中で流れた。
あの時、マルコさんにドキドキしていたのに、なぜか胸に刺さって忘れられない言葉。
愛してるから、離れなくてはいけない。
愛してるから…マルコさんの周りの人とは、揉めたくはない。

グラスの残りのワインを一気に飲み干して、トンっと強めにテーブルに置いた。
さすがにオヤジさんも、音に気が付いたサッチさんも驚いた顔をして私を見ている。
でもそんなの、もう構わずに言いたいことだけ伝えて、もう帰ろうと思った。
勢いよく立ち上がったから、ギギっと椅子が床を引き摺る音が店内に響いた。


「私はマルコさんが好きです」

「格好いいところとか、優しいところとか、意外に甘えん坊なところも、大好き」

「だから、ちゃんとわかってます。…邪魔はしませんから…」


ここに来るときに決めたのに。
絶対、泣くもんかって決めてたのに。
さすがに宣言していると、マルコさんとの時間がもうなくなってしまうことを実感して、自然に涙があふれた。
ぽろぽろと割と大粒の涙が、頬を伝ったり、目から直接テーブルに落ちたりしている。


「う、うん?」
「おいサッチ、☆☆☆は一体どうした?」
「いやちょっ…っと…おれにもよくわかんねェ。☆☆☆ちゃん、大丈夫?」


慌てた様子でカウンターから出てきたサッチさんが、白いタオルを手にして私に差し出してくる。
オヤジさんも、サッチさんも、首をかしげている様子。
タオルを受け取って涙を拭うも、とめどなくあふれてくるそれ。
最悪だ…。
格好悪い。
泣かないと決めたはずなのに、我慢できなかったダメな自分に心底落ち込んだ。


「邪魔なんてマルコは絶対思わねェから、そんなこと言わずにずっとそばにいてやってよ」


な?って言いながら私の顔を覗き込んでくるサッチさん。
何を言っているの?
私とマルコさんが一緒にいるということに、反対なんじゃないの?
わけがわからなくなって、頭の中が大混乱した。
未だに涙が出続けている私は、なんて声をかけていいのかわからない。


「わ、別れさせる為に、呼んだんじゃないんですか?」
「……は?」


ようやく絞り出した言葉は、最初にサッチさんから電話を貰った時から思っていることで。
別れるという単語すら口に出したくなくて、今までずっと訊けずにいた言葉。
必死に伝えたのにも関わらず、サッチさんはぽかんとした表情で首をかしげている。


「イヤイヤイヤイヤ、ちょっと待ってくれよ。なに、状況が全然わっかんねェんだけど!?なんで??」
「だって、さっき失敗した…って!」
「あれは、おれが残ってたらって思ったから!だって普通店主が残るだろォ!?あの日たまたま次の日仕事があったからマルコに任せたけど、おれが残ってたとしたら今頃愛し合ってたのはおれかもしれねェじゃん、☆☆☆ちゃんが店に入るきっかけはおれだったわけだし!サッチさんの最大の失敗よォ?」
「それに、オヤジさんが、…マルコさんの全部背負える女の人じゃないとって」
「だからそれが、☆☆☆ちゃんだろォ!?」

「マルコを頼むと、言ったろ?」


オヤジさんの一言で、私とサッチさんが言い合いみたいになっていたのが止まった。
そんなこと、一言も聞いてないし、初耳なんだけど。
私が目を丸く見開いて驚いているのがわかったんだろう、サッチさんも、私とオヤジさんを交互に何度か見遣り、それを往復してから、大きなため息を落とした。


「オヤジ…おれらそれ、今夜一度も言ってねェよ」
「そうだったかァ?…グラララ、まァ今言ったからいいじゃねェか、それよりおれァマルコの甘えん坊の方が聞きてェなァ」


豪快に大きな声で笑い出し、さらにお酒を煽っているオヤジさん。
今日このお店に来た時からの緊張は一体何だったのか。
ぽかんとしてしまっている私を見たサッチさんが、私の手にしているタオルで目元を拭ってくれた。
驚きすぎて、未だに涙が止まっていなかったからだ。

その時突然、バンッという大きな音がして扉が開くと、そこには息を切らせたマルコさんが立っていた。
息を切らせているどころか、いったいどこから走り始めたのかわからない程、呼吸は乱れていたし、スーツの上着なんて脱いで手に持っているし、ネクタイを緩めてシャツのボタンまでいくつか外している。
額にはうっすら汗までかいていて、必死に走ってきた様子が一瞬で見てわかる程の姿だった。
呼吸を乱したまま店内を見たマルコさんは、すぐに私の元へと駆け寄ってきた。
マルコさんの来店でさすがに驚いて涙は止まってはいたけど、濡れている目元を見てぎょっとした表情をしている。


「どうした!?」
「マルコさ……あの…」
「サッチてめェ、何してくれてんだい!」
「ああああっ、そうだよね、絶対そーなるよね!?痛い痛い痛い、ほんと、お前なんだってこんなタイミング悪ぃ時に来んだよォォォオオオ!!」


私の顔を確認した後、止める暇もなくすぐさま目の前にいるサッチさんの胸倉を掴み上げるマルコさん。
止めようにも私は涙で鼻も目もグズグズだし、サッチさんは尚も掴み上げられているから言葉を発することすらできなくなってしまっている。
肝心のオヤジさんはというと、さっきまでは動揺しているようにも見えたのに、今は楽し気に笑いながら二人の様子をお酒を飲みながら眺めていた。

思えば私たちは、最初から趣旨を伝えずに会話をしていたと思う。
私は最初からマルコさんとの付き合いに反対されているとの先入観があったし。
お二人はきっと、話の流れから推測するに、マルコさんが好きになった人に会いたかったということなんだと思う。


とりあえず落ち着いて、いったんサッチさん以外の私たちは席に座ることにした。
サッチさんは、鼻歌を歌いながら厨房で何かを作ってくれている。
ふぅ、と呼吸を整えてから、皆で今夜の勘違いの話をきっちりとし直した。
今度は、マルコさんも加えて。
そこで改めて、マルコをよろしく頼むなんて言われると、さっきとはまた違う涙が出てしまったけど。
それはマルコさんが横からハンカチでそっと拭ってくれた。

その後は、4人で美味しい料理に、美味しいお酒を頂き、和やかに遅くまでお話をさせて貰った。
途中、マルコさんの甘えん坊について何度も訊ねられたけど、マルコさんにしっかり手を握りしめられていたから内緒にしておいた。
お店を出るときには、ここに来た時とは違った気持ちでその扉をくぐることができた。
この先もまた、ここにマルコさんと一緒に来ることができそうで、心の底から安心している。
本当に、良かった。



**********



「おれは甘えん坊かい?」
「そうですよ、知りませんでした?」
「…どういうところがだよい」


マルコさんの部屋の、マルコさんのベッドの上。
互いに衣服を着ていない状態で横になっている。
さっきまでは激しく互いを求めていたけど、今は静かに身を寄せ合っていた。
肌を触れ合わせているのが気持ちがいいと、マルコさんは終わった後も服を着ることは許してくれない。
そのうえ、肌に直接顔をうずめるのも好きみたいで、今は私の腕の中にマルコさんの頭があって、胸元には唇が触れているから喋るたびに吐息が触れてくすぐったかった。


「こういうところです」
「これは気持ちがいいからだよい」
「…可愛い」


どこか不貞腐れたような物言いに、きゅんと胸が締め付けられるよう。
マルコさんの頭部を抱えてぎゅっと抱きしめると、マルコさんからも腰をしっかりと抱きしめられ、密着感が強まっていく。
マルコさんのことを甘えん坊だとか言いながらも、私自身こうして密着するのが好き。
鼻先をくすぐるふわふわとした、それでいて指通りのいい髪の毛に指先を通すと、何度かそれを梳かしていく。
それが気持ちいいと思ってくれている様子で、マルコさんが小さく吐息を漏らすから、肌にあたってくすぐったい。
指通りのいい髪の毛が、私の指からすり抜けて元の位置に戻っていくと、マルコさんが顔を上げた。
間近で見つめ合うと、薄暗がりでも表情がよく見える。
ゆっくりと身を起こしていくマルコさんに、横を向いていた私の身体を上へとむけられていく。


「☆☆☆、今日はこのまま泊まっていけるか?」
「はい…明日仕事ですけど」
「すべて一式揃ってるから、問題はねェだろ」
「本当に…ぴったりの服で驚きました」


一緒に笑い合いながら、その後その笑いが途切れた時に、キスを交わす。
マルコさんの頭部を撫でていた腕は、首筋に回して抱き着くように変えると、私の横に付いて支えていたマルコさんの腕が、私の背へと差し入れられていく。
次第に唇の触れ合う面が増え、マルコさんの舌先が私のそれを舐めていく。
さっきしたばかりなのに、すぐに身体の芯に熱が戻ってくるような感覚がある。
それにマルコさんの足が、私の間に割って入ってきて、体を開かされている感覚さえある。


「このままずっと…」
「マルコさん、私…ここにずっと居てもいいですか?」
「ああ、もちろん」
「違いますよ、ずっとって…ほんとにずっとですよ?」
「だから、構わねェよい」


この間はマルコさんが言ってくれたから、今度は私からお願いした。
だって一緒にいたいのは、私だって同じだから。
むしろきっと、私の方が大好き。
マルコさんが頼れて、一緒にいると安心できるようになりたい。
それに、何か悩むことがあるのなら、一緒に背負えるように。
今はそれが何を具体的にどうしたらいいのかわからないけど、だからこそ、近くにいたいと思うから。

もう時刻は1時を回っている。
このまま抱き合っていたら、明日に響いてしまうのはわかってるけど。
どうしても、マルコさんが大好きな気持ちが止められなくて。
彼を求める体の熱が、収まりつきそうになくて。
絶対に明日の仕事に響くことはわかってるんだけど。
それはきっと、マルコさんだって理解してるはずだけど、互いに止められやしないんだと思う。
それなら今夜は私が…。


「マルコさん、もう一回…したい」
「一度で終わりそうもねェ…☆☆☆、Ti adoro」
「Ti voglio bene」



〜HAPPY ENDING OF A STORY〜




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