世界がある日突然壊れて、元々適当に生きていた自分はさらにその世界でどう生きていいか分からずふらふらしていた。
一変した世界を牛耳りだした政府とかいうのがとりあえず気に入らなくて、政府の人間にケンカを売っては追われて。
そういう日常を繰り返していたある日、有心会という組織に拾われてそこの構成員になった。まあ恩も感じてるし、長も若も人使いも気性も荒いけど俺にはこっちの方が性に合ってたからなんだかんだでここは居心地がいい。
世界をあんなやつらには任せられない、ということで政府にケンカを売ってる有心会の方針も気に入ってたし、そんな感じで若がまたいつものように政府にケンカを売ってきたんだとおもってたら、どうやら今回は政府にとって重要な人物らしいという人間をさらってきたらしい(しかも女)
まあオレには関係ねーか、と他人事のように仲間とだべってたら若にその人間の監視役を命じられた。

で、今に至る。

「つかなんでオレが…」

若の言うことに逆らったって殴られて蹴られるだけだし、見張るだけなら別にいっか、とおもっていたんだけどなあ……。

「ねえ楓。いる?」
「いるよ。つか気安く呼ぶなよ。オレあんたの監視役なんだぞ」
「う…、だって楓しか話す相手いないんだもの…」
「……はー…、ま、いいけどな」

障子越しに話しかけてくるのは若が政府からさらってきた「お嬢」。政府に対する切り札として使うらしいのは若や長から聞いてるけど、見た目普通の女だった。

(まあ美人だし?政府の人間?にしては話せるし。退屈はしねーけど)

最初は敵みたいなもんだとおもってたけどそうでもなさそうだし、どうやら殿先生とも親しいみてーだ。若とも口喧嘩できるとこをみるとなかなか肝も据わってる。

「ね、楓」
「…んだよ、何か用か?殿先生ならいまは長たちと会議らしーから会えねーぞ」
「終夜?終夜に用はないけど」
「若なら他のヤツらと出かけてるから夕方まで戻んねえよ」
「トラにも用はないわ」
「はあ?なら何の用だよ」
「楓と話がしたいんだけど」
「………………………は?」

ことんと障子が開いて、振り返ったらお嬢が小さく顔を覗かせていた。すこし上目遣いで、ねだるようにこっちを見る緑色の瞳に、なんだかどきりとする。

「……だめ、かしら?」
「いや、ダメとか、ねー…けど…」
「ほんと?良かった。楓と話してると楽しいから好きなの」

ふにゃ、と笑うお嬢のその言葉にたぶん他意はないんだろう。裏表があるような性格じゃないことくらい、何度か話していればわかる。

(だから、タチが悪いっつー、か…)

なにオレまでほだされてんだ、とか冷静な自分が頭の片隅であきれてたけど。
まあとりあえず、いまのお嬢の笑顔は頭に焼き付けておこうとおもった。



目がんで、全て持っていかれた





title by≫群青三メートル手前




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