アベラシオン
(幾何光学的)な(恋)











「ふふふ長官。私もう一つ決めました」
「ロクでもないものだろう。言うな。さっさと仕事に戻れ」
「言うだけ言ったら戻ります。この間長官に教えてもらった夢なんてどうせ嘘っぱちですからね!今度は長官の女性の好みを教えてもらいます!」
「なんだそれは。棒蘇芳の入れ知恵か」
「タンタンの置き土産です。ふふふ!どうですか、これなら」

勝った、と紅秀麗の瞳が煌めいた。ずいぶんと生意気を言うようになったが、まず論点がずれていることに気付くのはいつだろうか。

「よしわかった。特別に教えてやろう」
「あるんですかっ!?」
「なんだ、聞きたいのだろう」
「いえ、聞きたい、感じはしますが…意外と言いますか、その」
「意見がはっきりしないのであれば今すぐ辞めろ」
「聞きたいです!」
「では話したら今度こそ心おきなく辞めるのだな」「いやです」
「どっちだ」
「いえ、辞める辞めないに関わらず聞きたいです」
「支離滅裂な発言をするな。首にするぞ」

ぐ、といつものようにつまる表情に、不思議と飽きることはなかった。感情はそんな奇妙な感覚を覚えたまま。

「ま、また別の手段を考えてきます!」
「考えんでいい。仕事しろ」

紅秀麗は本当に言うだけ言って、嵐のように去った。そして空間はまた、何事もなかったように静まり返る。

「うるさい奴だ」

その声もただ静寂に飲み込まれる。僅かに残った嵐の余韻さえも。






title by≫彼方に見た原色




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