さまに





(酸素を吐き出して呼吸困難)






「毎度のことながら秀麗殿には迷惑を」
「何を言っている愚兄その4。私は心の友との久方ぶりの交友を」
「おまえが道で笛を吹き札で荒稼ぎをしながら街を散策していると聞いただけでも胃が痛くなるというのに、それに秀麗殿を巻き込んだと聞いたときは真剣に首を括ろうかと思ったよ」
「あ、あの藍将軍。私なら大丈夫です。もう慣れました」
「素晴らしい!何も言わずとも考えていることが伝わるとは」
「お前は黙ってなさい!本当に申し訳ない」

ふふ、と可愛らしく笑う少女を見下ろしながらその優しさに救われる。この弟にここまで付き合ってくれる人間はそうはいない。

「とりあえず愚弟は引き取っていくから」
「こら愚兄その4。誰が愚弟だ」
「お前だお前!」
「ふふ、仲が良いのはいいことですよ、藍将軍」
「ありがとう、秀麗殿」

心優しい少女の気遣いに御礼をのべて龍蓮を引きずる。

「それでは私たちはこれで失礼するよ」
「はい。お気を付けて」

会釈してその場をあとにした。彼女は姿が見えなくなるまで見送ってくれて、その優しさに苦笑する。

「ふむ」
「なんだい龍蓮」
「愚兄その4も大概にお人好しだな」
「そうやって心の中を見透かすのはやめなさい」
「秀麗の心は澄んでいるぞ」
「だろうね」
「あの心地良さに様々な魚が寄ってくる」
「はあ」
「そして時には不器用な魚もいる」
「そうかい」
「…やれやれ。世話の焼ける愚兄だ」
「君に言われたくないよ」
(ほんとうに呼吸困難な魚だな)


心地良さに怯えた魚が一匹。
逆さまの魚。






title by≫彼方に見た原色




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