(たった一言にすら千年)




「君は私の心の友だ」
「はいはい。分かってるわよ今日のおやつは桃饅ね」
「ふむ、素晴らしい以心伝心だな。ここまで心が通じ合える友はまずいないだろう」
「はいはーい」

うららかな午後の日差しと愛しい友。この上ない幸福に思い付いた曲を奏でようと笛を手に取るとぱしっと腕を叩かれた。

「街の往来で急患を出す気?」
「何をいう心の友よ。この気持ちを風に乗せ遠く千里の彼方にまで」
「千里の彼方にまで死者を出さないで!」

柔らかい空気が辺りを包むのが身体に染みるように伝わってくる。ただ1人が隣にいるだけでこの世界がどれだけの色で満たされているのだろう。残念なことにそこまでは伝わらないようで、色を与えてくれた少女はぶつぶつと何かを呟いていた。その姿もなにもかもが愛しいひと。

「今日も感謝だな」
「話題ころころ変えられてもついてけないわよ」

きみにであえたきせきに。




待ち焦がれた千年の恋



title by≫彼方に見た原色




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