ここはの領域










鈍色に統一された無機質の、何の気配も感じない空間で、冷たい空気を吸い込んだ。生命すら必要ない模造の世界でただふわりと、体重を失った身体が浮遊する。
この感覚にもずいぶんと慣れ、今では神の人を殺すためにただ道具のように空を駆る、その感覚が心地良かった。

「久しぶりに、今日は機嫌が良くないようですね」

この空間を作る神と呼ばれる少女は、いつも不機嫌だ。だからこそ自分はここにいて、彼女のために神を殺す。そのことに僅かの優越を感じた。

「僕も、随分歪んでいる」

だってここにいることを戦うことを守ることを許されたのは僕らだけ。この神の領域で、少女の心を守ることを許された僕らだけが、

「彼女の心を穏やかにできるのは彼だけだとしても」

せめてここであなたを守ることだけは。

(譲りたくない。例えそれがほんとうの神さまであっても)






title by≫彼方に見た原色




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