「お前のそれはもはや才能だな」
「は、い、いきなりなんですか?」





素直じゃない特別です。





書類提出のため、荷物持ちに紅秀麗を捕まえて渡り廊下を歩いている途中。
すれ違う人間全てから何かしら礼を言われている娘は、「ちょっとお饅頭作りすぎてしまって…各部署の方々に差し入れして来たんです」と答えた。
中には明らかにただ謝礼をしているだけではない表情で会話している者も居る。勿論それに、この娘が気付いているわけもなく、全て笑顔で応対していた。

「ただでさえお前の男運の悪さは因縁めいたものがあるというのに、さらに何か余計なことをするのか」
「お、お饅頭差し入れただけでなんでそこまで言われないといけないんですか…!」
「自覚しろ、という話だ」
「は?はあ…」

全く理解していない表情で返事をする娘をみて、鈍感さも才能のひとつだったことを思い出した。この娘がこうやって、貧乏でがめついくせにほいほいひとに親切を与えるせいで最近御史台の周辺が賑やかになっていく。

「あ、そうだ。長官にも作ってきたので、食べてくださいね」
「いらん」
「なんでそう、一刀両断なんですかー。もらってくださいよー。毒なんて入ってませんから」
「即刻クビになりたいか」
「冗談です。特別製ですよ」
「特別な毒入りか」
「しつこいです。絶対食べてもらいますからね!」
「どっちがしつこいのだ」




結局。




「さあ、どうぞ!」
「なんだこの蒸籠いっぱいの巨大な饅頭は」
「特別製です!」






特別、を隠すための義理。
(バレンタインネタでした)





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